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Channel: 永久投資家の米国株投資物語
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米国景気後退に備える(米国個人消費の分析)

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Federal Researve Bank of St.Louisの統計データより,米国景気変動が個人消費に与える影響を分析します。米国のGDPの7割は個人消費が占めており,米国株の命運を左右すると言っても過言ではありません。

米国の個人消費は長期的に右肩上がり

長期的に見て右肩上がりのトレンドは崩れていません。日本の場合,1990年代以降明らかに個人消費の成長が鈍化していますが,米国でも2008年以降やや伸びが緩やかになったとは言え成長トレンドには変わりありません。

短期的な景気後退の局面は1960年代以降に8回ありますが,日本の失われた20年と比較すると極めて短期間で回復しています。そのため,長期的には心配は無用と言いたいところですが,かといってノープランで臨むのは長期投資家としてはあまりに無策です。

個人投資家としては常にリスクには気を配り,景気後退期の1〜2年間をどう振る舞うのがベストか,戦略を立てておく必要があります。

Personal_Consumption_Expenditures_1959-2016

個人消費の内訳

個人消費は,大きく分けると耐久消費財,非耐久消費財,サービスに分けられます。(日本の場合は経済産業省がサマリーをまとめています。)

米国の場合のそれぞれの長期推移を見てみると,以下のようになります。

耐久消費財への個人支出

景気後退の影響を最も受けるセクターです。給料が大きく下がった場合,家や車を買い換えている場合ではなく,消費マインドの変化に敏感です。

Personal Consumption Expenditures_DurableGoods1959-2016

非耐久消費財への個人支出

非耐久消費財ということで,衣類などの半消耗品なので支出削減の対象にならないかと思いきや,意外にも大きく支出が減らされていることが分かります。本当に困ったときには服も買い換えないということでしょうか。

Personal_Consumption_Expenditures_Nondurable_Goods1959-2016

サービスへの個人支出

長期的に見て最も成長しているのがサービスです。また,景気後退の影響もほぼゼロと言っていいでしょう。伸び悩むもののほとんど減りません。

Personal_Consumption Expenditures_Services1959-2016

個人消費のサマリー

2016年時点で以下のようにサービスへの支出が最大で約7割を占めます。家や車などの耐久消費財は1割程度であり,衣服などの非耐久消費財が2割です。

分類 金額($Billion) 比率
耐久消費財 1350 10.8%
非耐久消費財 2700 21.6%
サービス 8500 67.7%

 景気変動による影響は「もの」のみ

先ほどのグラフを見ていただくと分かるように,2008年のリーマンショック・サブプライムショックの際に,耐久消費財は-20%の減少非耐久消費財は-15%の減少となりました。一方でサービスへの支出は-1.5%程度の減少で済んでいます。

一般的に言われる「不景気で財布のひもが締まる」減少は,いわゆる「もの」に対しては該当しますが,サービスに対しては該当しません。サービスというのは,運輸,通信,金融,ヘルスケア,公益(電気・ガス・水道),資本財(国防)などが該当します。確かに,景気が悪くなったとしても固定費として出費するものなので,減らしようがないものばかりです。

景気後退期の戦略

株価の下落は,上昇時の3倍の速度です。下落でもたもたしていると命取りであるため,平時にこそ売りを意識しておく必要があります。もし景気に陰りが見えたらすぐキャッシュに換え,安全なセクターに資金を逃すようにしなければいけません。

手を出してはいけないセクター(景気の影響を受ける)

一般消費財の大半が含まれます。

・耐久消費財(家,自動車,家具など)
・非耐久消費財(衣服,靴,家電など)
・資本財(国防以外の民需)
・素材

手を出して良いセクター(景気の影響を受けにくい)

・生活必需品
・運輸
・通信
・情報サービス
・ヘルスケア
・金融
・公益
・資本財(特に国防など)

景気と関係がないセクター(例外)

・エネルギー(ほぼ世界の需給関係で決まるため,米国個人消費は無視して良い)

 

2016年に入ってから急激に公益セクターの株価が騰がっていますが,リスクオフ&景気後退が意識されている証拠でしょう。ただし,注意したいのは公益は成長(グロース)要素がなく,あくまで資金退避場所として適しているだけだということです。

個人的には景気後退期にサービスに投資するなら通信,情報サービス,ヘルスケアなど,長期的に見て成長する分野が良いと思います。(もちろん,投資リターンは実績/期待の比で決まるものであるため,過剰に期待された株はPERの倍率が下がるため景気後退期には避けるべきです。)

 


グーグル,アルファベット(GOOGL, GOOG) 企業分析

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グーグル(GOOGL)は未来志向であり,よく分からない用途に対しても金遣いが荒く,配当ゼロで株主還元はほとんどしない,IRも不親切で開示が不十分という意味で,投資家目線では決して優等生ではありません。しかし,良くも悪くもこうしたエンジニア文化というのは今の企業では極めて貴重です。研究開発投資に糸目を付けないというのは,かつてのゼロックス(XRX)やIBM(IBM),日本で言うとNTTなども通ってきた道です。

結局のところ,投資家として着目すべき点は,今の経営陣であるラリー・ペイジ氏らが,研究開発投資を実らせるビジネス手腕があるかどうかであり,今までのところグーグルは期待値以上の成果を上げてきました。

特に先見の明が光るのがスマートフォンOS「アンドロイド」です。アップル(AAPL)が狭く高い壕(iPhone/iOS/iTunes)を掘って城を守ろうとする一方,グーグル(GOOGL)はアップルの周りを覆うように浅く広い壕で覆ってしまって逆に水攻めにしているような状況ですね。気がつけば,プラットフォームを独占しているのはグーグルの方です。最小限の投資で最大限のシェア(ユーザー)を獲得し,さまざまなサービスで逃れられないようにし,グーグルが囲い込んだユーザー目当ての企業からオークション形式で広告料を稼いでいく様は見事です。広告戦略も日進月歩で進化しており,グーグルのプログラムはユーザーの嗜好を驚異的な精度で学んでいっています。

10年後の世界を一変させうる知の宝庫であることは間違いありません。

企業ホームページ

Google

セクター

情報技術(情報サービス)

企業状況

検索エンジンで世界最大の「Google」を運営しています。収益の柱は広告収入です。検索以外にもグーグルマップ,グーグルアース,Gmailなどの無料サービスを次々に投入し利用者を獲得しました。動画配信サービスのYouTube買収によりコンテンツを手に入れ,巨大企業に成長しました。

モバイル向けのOS「アンドロイド」を買収により獲得し,スマートフォンOSのシェア8割を獲得しています。近年では自動運転やIoTの分野に進出するなど次世代テクノロジーへの投資も積極的です。

世界中で検索エンジンとして首位のシェアを獲得しています(中国など除く)が,その影響力の大きさから欧州委員会からEU独占禁止法違反を指摘されています。

海外売上比率は57%です。

成長市場

ユーザー(検索サービス利用客)

成長率は鈍化していますが,今後も新興国中心にインターネットに接続する人口が増えることを考えれば成長は続きます。

アドバタイザー(ユーザーへの売り込み)

レガシーな紙媒体やラジオ・テレビからオンラインへ広告出費が流れおり,年率11%の成長が予想されています。特にB2Cである一般消費財セクターでは今後もe-コマースの流れは当分は続くと思います。

regional-digital-ad-spend

競合状況

競合はマイクロソフト(MSFT)のBingやヤフー(YHOO)や百度(BIDU)です。グーグル(GOOGL)は7割のシェアを維持しており,またモバイルではさらに高シェアです。(アンドロイドのおかげで。)

search-engine-market-june-2015-1

最近のマーケット状況

5年チャート

goog-5yr-chart_20160226

日足チャート

goog-daily-chart_20160226

先四半期のキャッシュフロー

goog_cf_2015q4

直近株価評価

成長性と比較して割安です。ただし,創業者や従業員が持ち株やストックオプションを売り抜けようとしているのが見え見えです。個人的には買ってよい水準だと思いますが,内部関係者からするとIPOしてから既に8倍程度に株価が上昇しており,十分に利が乗ったと考えているということでしょう。(何か業績の変調を予見しての売りかどうか判断が付きませんが,)継続的な売り圧力にはならないと思います。

現状 スコア 満点
機関投資家比率 73.0% 10 20
機関投資家の売買動向 2.9% 6 12
インサイダーの売買動向 -93.5% 0 12
現在の株価(資産に対する割安度) $705.07 15 20
現在のPER(Forward) 17.47 10 20
現在の配当利回り 0.0% 4 16
45点 100点

10年ファンダメンタル分析

10年ファンダメンタル レーダーチャート

バイドゥ(BIDU)と似ていますが,大きく異なるのが定性的評価(ブランド力とエコノミック・モート)です。グーグルはインターネットを触ったことのある人なら誰でも知っているスーパー・ワイドモート企業です。また提供しているサービスはどれも生活に欠かせないものとなっており,以下のグラフもGoogle APIで書かせているぐらいです。オンラインの基幹インフラであり,私たちの世代は下手したら一生付き合うことになるかも知れない企業の一つだと思います。

10年ファンダメンタル 得点表

株主に還元していない点以外は文句なしの業績を維持しています。10年平均と比較して,5年平均では成長率の鈍化が見られていますが,マンモス企業に成長した今はやむを得ないことです。

5年平均 5年スコア 10年平均 10年スコア 満点
グロース株総合評価 355点 380点 400点
グロスマージン(粗利率) 60.9% 40 60.8% 40 40
営業キャッシュフローマージン 34.3% 30 34.8% 30 40
株主資本利益率(ROE)平均値(Net Income/Equity) 16.3% 10 17.6% 10 20
収益力評価 80点 80点 100点
営業キャッシュフロー増加率 12.3% 30 21.9% 40 40
フリーキャッシュフロー増加率 7.7% 24 25.4% 32 32
EPS増加率 8.9% 21 16.5% 28 28
成長力評価 75点 100点 100点
自己資本比率平均値 79.3% 40 80.9% 40 40
流動比率(流動資産/流動負債) 466.8% 40 536.0% 40 40
クレジット格付け 18 20 18 20 20
財務健全性評価 100点 100点 100点
平均配当利回り 0.0% 7 0.0% 7 28
自社株買い利回り -1.2% 0 -1.2% 0 16
配当金増加率 -100.0% 0 -100.0% 0 28
配当性向(増配余地) 0.0% 0 0.0% 0 28
株主還元評価 7点 7点 100点
ブランド力 99 60 99 60 60
エコノミック・モート Wide 40 Wide 40 40
定性的評価 100点 100点 100点

10年分析グラフ

営業CFが順調に伸びているのは良いですが,気がかりなのは投資CFがかなりの割合を占めるようになっていることです。2013年以降は営業CFの4割〜5割程度を投資CFが占めており,これら数年がかりの投資が実るかどうかで評価が大きく変わってきます。

goog_10yr_analysis

優良銘柄の条件

優良銘柄の条件 結果 判定 備考
条件3:他社と差別化できる優れた新製品を持つ 検索エンジンが最強。YouTubeもブランドあり。
条件5:主力製品の市場が長期的に拡大し続ける余地がある  検索広告自体が成長余地あり。先行投資のウェアラブルやGoogle Carなども将来の話だが市場拡大余地大。
条件10:売上,営業キャッシュフロー,フリーキャッシュフロー,EPSのバランスがよい 極めて美しい。

バフェット流 大量解雇銘柄に投資する

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アーリーリタイヤしてウォーレン・バフェットやジョージ・ソロスのような「専業」の永久投資家になるというのは,多くのサラリーマン投資家の皆さんの共通の夢だと思います。その夢のためにも,目の前の仕事は歯を食いしばってこなし,会社にしがみつかないといけないというのが,サラリーマンとしての定めです。

一方で,投資家の一人としては,社員の大量解雇というニュースは非常に魅力的です。なぜなら社員は株主のために価値を生んでくれる金の卵を産む鶏である一方で,大飯喰らいの鶏だからです。

「会社という貴重なパイを少ない人数で分け合う」という意味では,自社株買いによる株数削減と大量解雇による社員削減は同じ効果があります。自社株買いと大量解雇の違いは,配当という形で分け前をとる株主が減るか,給料という形で分け前をとる社員が減るかの差です。

そして,自社株買いと大量解雇をこよなく愛するのがウォーレン・バフェットです。バフェットが企業のどこをチェックしているかというと「株主一人当たりの会社の資産価値が向上していること(BPSに相当)」「社員一人当たりの生産性が向上していること(利益/社員一人に相当)」の2点です。

大量解雇が自社株買いよりも効果が大きいのは,新陳代謝効果でしょう。例を挙げると,IBM(IBM)は戦略的分野への改革に取り組んでおり,2015年にクラウド分野やWatson分野に関する買収で70000人程度を新規雇用する一方で,全世界で72000人程度を解雇することに成功しました。その結果として,モルガン・スタンレー(MS)によるアップグレードに繋がりました。

また,ヒューレット・パッカード(HPQ)やシュルンベルジェ(SLB)は業績不振からですが2015年中に大量解雇していますし,ウォルマート・ストアーズ(WMT)やメイシーズ(M)もつい最近,数十〜数百店舗閉鎖や数万人規模の大量解雇を発表し,2016年に入り株価が反転しています。

良い大量解雇(Mass Layoffs)とは?

ダイエット(株数・社員数)は基本的にマーケットにとっては善です。ただし,効果の出方としては,一度の解雇の規模が大きければ大きいほど良いです。解雇というのは一度にやるから市場にショックを与え,底打ちの期待を生みます。だらだらと長期的にやっているようでは,引き当て費用ばかりが嵩む割に,ショック効果も薄れます。

大量解雇銘柄

ここ20年間の大量解雇銘柄には,次のようなものがあります。一目見て分かる通り,古参の大企業ばかりです。(若いグロース株はそもそも事業拡張するからグロース株なのであって,雇用数は純増するのが普通です。)そして,大量解雇を行う企業の経営陣は「株主>社員」という意識があるため,高配当銘柄も多いです。(AT&T(T)やIBM(IBM),ボーイング(BA),キャタピラー(CAT)など)

Date Organization Industry Number of Layoffs
Jul-93 IBM Computer 60,000
Nov-08 Citigroup Financial 50,000
Jan-93 Sears Roebuck & Co. Retail 50,000
Sep-11 United States Army Government 50,000
Feb-09 General Motors Automotive 47,000
Jan-96 AT&T Telecommunications 40,000
Dec-05 United States Air Force Government 40,000
Jan-02 Ford Motor Co. Automotive 35,000
Jan-03 Kmart Corp. Retail 35,000
Jan-09 Circuit City Stores Retail 34,000
Sep-01 Boeing Co. Aerospace/Defense 31,000
Sep-11 Bank of America Financial 30,000
Mar-10 United States Postal Service Government 30,000
Aug-09 United States Postal Service Government 30,000
Jan-02 United States Postal Service Government 30,000
Dec-98 Boeing Co. Aerospace/Defense 28,000
May-12 Hewlett Packard Co. Computer 27,000
Jan-01 Daimler Chrysler Automotive 26,000
Apr-03 Alameda School District Government 25,000
Jun-05 General Motors Corp. Automotive 25,000
Dec-08 Merrill Lynch (Bank of America Merger) Financial 25,000
Sep-08 Hewlett-Packard (EDS) Computer 24,600
Aug-01 Lucent Technologies Telecommunications 24,428
Jan-06 Ford Motor Company Automotive 23,200
Aug-02 Ames Department Stores Retail 22,000
Mar-02 Kmart Corporation Retail 22,000
Jun-05 Winn-Dixie Retail 22,000
Jan-09 Caterpillar Industrial Goods 20,000
Jan-09 Pfizer (Wyeth) Pharmaceutical 19,425

2015年に限ると以下の通りです。

2015-layoffs-update5

大量解雇の効果

大量解雇の効果をまとめると以下の通りです。

対メディア・対投資家のプレゼンス

最も直接的な効果は,会社への投資家の信頼を取り戻せることでしょう。

大量解雇を行うことで,新しい分野にシフトしていることを投資家に示すことができ,経営陣への評価も高まります。また,機関投資家によるアップグレード効果で株価が上昇することも期待できます。

対社内政治

また,一般的に大企業で古株の企業となると,衰退期に入った分野であるにもかかわらず,社内政治的に声の大きい分野というのが存在します。保守的な人材を取り除くことで,社内改革をスムーズに進めることが可能です。例えば,スティーブ・ジョブスは独裁によって,不要分野を切り捨てアップル(AAPL)を立て直しました。

大量解雇のデメリット

短期的な売り圧力

一方で,大量解雇にはデメリットもあります。何事も口コミの時代であるため,TheLayoff.comなどで「IBMに35年勤続して評価も高かったのに,突如解雇された。」といった悪評が書かれます。日本IBMの外資流の解雇のやり方は不評です。

また自社株を保有している社員が解雇されれば恨まれて売り払われます。優良な長期ホルダーを失うことで売り圧力が高まります。

この売り圧力も一見するとマイナスである一方で,なかなか出てこなかった売り物がバーゲンセールで出てくるという意味では投資家にとってはプラスです。

社員の士気低下

いつ解雇されるか分からない企業というのは,勘がよい優秀な人材は寄りつかないものです。また,社内でも士気低下・生産性の低下に繋がります。こればかりは,マイナスの影響しかありません。

解雇情報

解雇情報を眺めていてもたいていは数十〜数百人程度でサプライズの無いものが多いですが,たまに数千人〜数万人規模の解雇情報が出てきます。Mass Layoffs, Major Layoffs で検索すると直近の解雇情報がいろいろ見られるため便利です。

連続増配銘柄に投資する(3) 投資ルールを決める

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連続増配銘柄に投資するシリーズ(1) 配当王(50年以上連続増配)・配当貴族(25年以上)(2)配当コンテンダー(10年以上)に続いて,高配当銘柄への投資ルールについてまとめます。

グロース株は営業CFPS,フリーCFPS,EPSのそれぞれの成長率を基準に選びます。言い換えれば,高収益で高成長というファンダメンタルなトレンドをいつまで維持できるかが最大の関心事です。私の10年分析の結果ではグロース株上位銘柄は,アルファベット(GOOG, GOOGL),バイオジェン(BIIB),プライスライン(PCLN),ナイキ(NKE)などで構成されています。こうした銘柄を買うルールは単純明快で「四半期決算がポジティブサプライズを続けているか?」です。

一方,高配当銘柄の善し悪しを判断する材料としては成長性は必ずしも役に立ちません。なぜなら,高配当利回りは,配当が高いということを意味するのではなく,「株価が配当の割に割安に留まっている」ことを意味するからです。株価が安いにはそれなりの理由が必ずあります。売上減(成長力低下),訴訟(特別損失)など。そのため,売買や持ち方により厳格なルールを要求されるのは配当株の方です。

配当株投資ルール

ルール1:連続増配銘柄に絞る

連続増配=安定したセクターで安定した事業基盤を築いていることを意味するためです。
基準は最低でも10年以上連続増配(1) 配当王(50年以上連続増配)・配当貴族(25年以上)(2)配当コンテンダー(10年以上)

ルール2:高配当銘柄に絞る

高配当=株価が割安=ハイリターンを意味するためです。
基準は配当利回り2.5%以上

ルール3:配当性向が低い銘柄に絞る

EPSが赤字であったり,配当性向が120%というような状態は継続不可能であるため除外します。
基準は配当性向が90%以下

ルール4:10年間のグロスマージンが一貫して高い銘柄に絞る

セクターによって景気の変動の受けやすさは異なりますが,グロスマージンが高止まりしていれば安全とみなせます。
基準はグロスマージンが15%以上

ルール5:10年平均のCFPS,EPS成長がプラスである銘柄に絞る

CFPSやEPSがYoYでマイナス続きであれば,やはりいずれDPSも頭打ちになるためです。
基準はCFPS成長率,EPS成長率が0%以上。

ルール6:減配したら即たたき売る

減配,さらに良くないのは無配ですが,どちらも即座に損切りする必要があります。

スクリーニング

上記のルールに従ってスクリーニングした結果を利回り順に並べました。(計算に時間がかかるので暫定的にS&P500とS&P400 Mid Capに絞っています。)

定番の銘柄が残った一方で,AT&T(T)などはCFPS成長率がマイナスで脱落し,シェブロン(CVX)は配当性向が100%超えで脱落したように,一般的に人気な銘柄も100点ではありません。安定した高配当銘柄を選別するのもなかなか難しいものです。

王/貴族 ティッカー 企業名 増配年数 株価 配当 利回り 配当性向 GICS
Contender CAT Caterpillar Inc. 22 72.84 3.08 4.23% 88.0% Industrials
Contender CMP Compass Minerals International, Inc. 12 68.72 2.78 4.05% 59.3% Materials
Contender CMI Cummins Inc. 10 102.24 3.9 3.81% 49.7% Industrials
Contender IBM International Business Machines Corp. 20 137.8 5.2 3.77% 38.7% Information Technology
Contender QCOM QUALCOMM, Inc. 13 52.66 1.92 3.65% 63.8% Information Technology
Contender BBY Best Buy Co Inc 13 33.57 1.12 3.34% 43.8% Consumer Discretionary
Contender FLO Flowers Foods, Inc. 14 17.74 0.58 3.27% 65.2% Consumer Staples
King KO The Coca-Cola Co 53 44.11 1.4 3.17% 83.8% Consumer Staples
Contender GPS Gap Inc 11 29.29 0.92 3.14% 41.3% Consumer Discretionary
Contender MCHP Microchip Technology Inc. 14 46.83 1.44 3.07% 88.3% Information Technology
Aristcrat SON Sonoco Products Co 35 45.63 1.4 3.07% 57.4% Materials
Aristcrat MCD McDonald’s Corporation 39 117.18 3.56 3.04% 74.2% Consumer Discretionary
Contender LLTC Linear Technology Corporation 23 42.42 1.28 3.02% 62.7% Information Technology
Contender ADI Analog Devices, Inc. 13 55.78 1.68 3.01% 78.1% Information Technology
Aristcrat TROW T. Rowe Price Group Inc 29 72.78 2.16 2.97% 46.7% Financials
Contender CSX CSX Corporation 11 25.23 0.72 2.85% 36.0% Industrials
Contender DE Deere & Company 12 84.88 2.4 2.83% 43.7% Industrials
King JNJ Johnson & Johnson 53 106.5 3 2.82% 54.7% Health Care
Aristcrat PEP PepsiCo, Inc. 43 100 2.81 2.81% 76.6% Consumer Staples
King GPC Genuine Parts Company 59 93.65 2.63 2.81% 56.8% #N/A
King MMM 3M Co 57 160.07 4.44 2.77% 58.6% #N/A
Contender TXN Texas Instruments Incorporated 12 54.89 1.52 2.77% 53.9% Information Technology
Contender PX Praxair, Inc. 22 108.79 3 2.76% 56.1% Materials
Aristcrat MSA MSA Safety Incorporated 44 46.47 1.28 2.75% 68.1% Industrials
King DOV Dover Corp 60 63.2 1.68 2.66% 30.8% Industrials
Contender UTX United Technologies Corporation 22 97 2.56 2.64% 29.7% Industrials
Contender XLNX Xilinx, Inc. 13 47 1.24 2.64% 61.7% Information Technology
Contender FAST Fastenal Company 16 46.22 1.2 2.60% 67.8% Industrials
Contender MON Monsanto Company 15 85.89 2.16 2.51% 56.1% Materials
Contender CR Crane Co. 11 52.57 1.32 2.51% 33.9% Industrials

 

キャタピラー(CAT) 企業分析

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企業ホームページ

Caterpillar

米国企業としては珍しくアニュアル・レポートの日本語版が用意されています。(ほかにも中国語など多言語で用意。)ここまでIRに誠実な企業も珍しいです。

セクター

資本財(農業および建設用機械)

企業状況

世界首位の重機メーカーです。主力事業は資源開発や建設業者向けの油圧ショベル,ブルドーザー,工業用エンジンなどです。部品交換や手厚いサポート体制で長期的な顧客との信頼関係を築くことを重視しています。またディーラーとの関係も重視しています。

セグメントとしてはエネルギー&輸送部門が最大(39%)で,続いて建設産業部門(35%),資源産業部門(16%)の3部門が中心で全体の90%を占めています。

2012年までは好調なエネルギー関係への投資熱で好業績を連発していましたが,2014年以降続く資源・エネルギー価格の下落による影響で,直近の売上は大幅に減少しています。特に資源産業部門は売上半減近くになっています。5000人以上のリストラによる費用削減も行っていますが,売上減少をカバーすることは出来ていません。

2015年に引き続き,2016年もYoY-10%程度売上が減少するとのガイダンスが出ており,見通しは明るくありません。

地域別では,北米43.9%,欧州アフリカ中東24.4%,アジア太平洋19.8%と海外展開に積極的です。海外ではコマツと競合しています。

市場

エネルギー&輸送部門

石油・ガス・発電所などのエネルギー産業向けには,ドリル,ガス・タービン発電機などを販売しています。三菱重工や日立などが競合してきます。

船舶・鉄道などの輸送産業向けには,ディーゼルエンジン,レシプロエンジンを販売しています。こちらはカミンズ(CMI)が主要な競合でしょう。

建設産業部門

油圧ショベル,バックホー・ローダーなど工事現場で使う重機全般を販売しています。コマツが競合ですね。

資源産業部門

主として鉱業や採石業向けのトラックやショベル,採掘機を販売しています。鉱物資源が中心でしょう。

 

最近のマーケット状況

5年チャート

cat-5yr-chart-20160307

日足チャート

直近の株価は原油価格の反転に連動して高騰しています。

cat-daily-chart-20160307

先四半期のキャッシュフロー

ここ1年間の四半期決算では売上が右肩下がりに減少しています。2015Q4ではついにEPSがマイナスに転落しました。業績としては非常に苦しい状態が続きますが,一方でキャッシュフローは盤石であり,利払いの圧迫も受けていません。配当に関しては問題ないと思います。

cat-cf-2015q4

直近株価評価

現在の株価は資産価値から考えて割安です。

現状 スコア 満点
機関投資家比率 67.0% 10 20
機関投資家の売買動向 -2.7% 3 12
インサイダーの売買動向 -0.9% 9 12
現在の株価(資産に対する割安度) $72.84 20 20
現在のPER(Forward) 20.07 5 20
現在の配当利回り 4.2% 16 16
63点 100点

10年ファンダメンタル分析

株主還元には非常に積極的です。連続増配22年を記録しており,自社株買いも行っています。

ただし,景気循環株であることから売上・利益の振れ幅が大きく,直近5年で見ると営業CF,EPSはマイナス成長です。

石油メジャーやシェールガス企業は新規投資を行う余裕はなくどこも25%〜50%程度の設備投資削減を発表しています。ここ1年ぐらいは引き合いもあまり期待できないと思われます。

10年ファンダメンタル レーダーチャート

10年ファンダメンタル 得点表

重機は安全性と信頼性・サポートが重視されることから,キャタピラー(CAT)は確固たるブランド価値を築き上げることに成功しています。ただし,競合状況としては厳しく,収益性は余り高くはありません。

5年平均 5年スコア 10年平均 10年スコア 満点
配当株総合評価 230点 246点 500点
グロスマージン(粗利率) 27.8% 30 27.7% 30 40
営業キャッシュフローマージン 13.3% 0 14.1% 0 40
株主資本利益率(ROE)平均値(Net Income/Equity) 19.8% 10 32.5% 20 20
収益力評価 40点 50点 100点
営業キャッシュフロー増加率 -1.0% 0 1.4% 10 40
フリーキャッシュフロー増加率 2.0% 8 0.9% 8 32
EPS増加率 -13.9% 0 -3.8% 0 28
成長力評価 8点 18点 100点
自己資本比率平均値 19.7% 10 16.4% 10 40
流動比率(流動資産/流動負債) 139.4% 20 136.2% 20 40
クレジット格付け 14 15 14 15 20
財務健全性評価 45点 45点 100点
平均配当利回り 2.5% 21 2.6% 21 28
自社株買い利回り 2.0% 12 1.3% 8 16
配当金増加率 10.3% 28 10.3% 28 28
配当性向(増配余地) 31.2% 21 31.2% 21 28
株主還元評価 82点 78点 100点
ブランド力 40 15 40 15 60
エコノミック・モート Wide 40 Wide 40 40
定性的評価 55点 55点 100点

10年分析グラフ

cat-10yr-analysis

優良銘柄の条件

優良銘柄の条件 結果 判定 備考
条件3:他社と差別化できる優れた新製品を持つ 建設機械ではブランド力あり。品質・サポートに定評。
条件5:主力製品の市場が長期的に拡大し続ける余地がある  資源分野は短期的に大幅に投資削減されて逆風。 ×
条件10:売上,営業キャッシュフロー,フリーキャッシュフロー,EPSのバランスがよい  バランスはよいが,売上減が響いている。

アルタ・サロン・コスメティックス・アンド・フラグランス(ULTA)企業分析

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典型的なグロース銘柄の一つであるアルタ・サロン・コスメティックス・アンド・フラグランス(ULTA)について取り上げます。

企業ホームページ

Ulta beauty

セクター

一般消費財(小売り)

企業状況

アルタ・サロン・コスメティックス・アンド・フラグランス(ULTA)は,ULTA Beautyを展開する米国最大の美容品小売業者です。取り扱っている製品は,美容品,香水,スキンケア用品,ヘアケア用品およびサロンサービスです。創業は1990年で今から25年前で,All things beautyやAll in One Placeなどといった美容品販売チェーンを抱えています。2015年末の時点で全米で860店舗。(2010年の389店舗から5年で倍増)年100店舗のペースで出店し,将来的には全米で1200店舗まで増やす計画です。

店舗に関しては,基本的にはワンストップ・ショッピング(1店舗で何でも揃う)の店構えであらゆるブランドの製品を販売しています。また,他社との差別化要素としては,スタッフが歩合給ではないことで顧客に対してフレンドリーでバイアスのかかっていないアドバイスを提案できる点にあります。品揃えの良さに加えて,店員の質とサービスへのロイヤリティーでリピート客を掴む戦略です。これは美容業界という口コミや心象が重要なマーケットでは優れた戦略です。

現在,ULTAの会員数は1500万人に上ります。このリピート顧客がULTAの売上の8割を占めており,いかに既存顧客のリピート率を高めるか,また新規会員を増やすかが重要ですが,他社と比べてマーケティング的にも成功している部類だと言えるでしょう。

成長市場かつ安定市場

世界の美容品市場は年率4.6%での成長が見込まれています。
また,不景気になったからといって化粧をしなくなるということもないため,準生活必需品と呼んでも良い不況に対して強い市場です。

the-cosmeceutical-market-current-and-future-outlook-3-638

米国の美容市場は世界最大であり,$121B(日本円で約14兆円)という巨大な市場です。この内訳は,美容品,ヘアケア用品,香水,入浴用品,スキンケア用品などが$71B(約8兆円),ヘアケア・スキンケア・ネイルなどのサロンが$50B(6兆円)です。

 

セグメント

サロン

Ultaが現在コア部門として力を入れているのは,ヘアケア,スキンヘルスとブローの3つのサロン部門です。アルタ・サロンの売上比率は全体に対して数%と小さいですが,サロン会員はノン・サロン会員に比べて一人当たり2倍以上お金を使ってくれることから,ロイヤルティが高い顧客を獲得することによる利益率の向上が見込めます。

ネット販売

ネット販売に関しては,まだまだ全体の5%程度の売上に留まっており,今後数年で10%程度まで成長させる計画です。(2014年は年率56%の売上高成長。)

競合状況

Sally Beauty, CVS Health Corporation, Regis Corporationなどが競合にあたります。

最近のマーケット状況

5年チャート

ulta-5yr-chart_20160311

日足チャート

3月10日の決算発表後,17%程度上昇しています。
チャート的にはカップ右端がやや崩れたカップ・ウィズ・ハンドルの形で新高値を更新しました。出来高も平均の2.5倍程度と大商いですし,テクニカルには買いだと思います。

ulta-daily-chart_20160311_annotate

先四半期のキャッシュフロー

ここ数期は美しいSPS, CFPS, EPSのバランスです。配当は行っていませんが,自社株買いを僅かながら行っています。

ulta-4q-cf-2015q4

直近株価評価

現在の株価は割高ですが,ここ5年の高成長を見る限りまだ高値を更新していく可能性は高いと思います。

現状 スコア 満点
機関投資家比率 89.0% 15 20
機関投資家の売買動向 -24.5% 0 12
インサイダーの売買動向 -0.5% 9 12
現在の株価(資産に対する割安度) $191.62 15 20
現在のPER(Forward) 27.77 0 20
現在の配当利回り 0.0% 4 16
43点 100点

10年ファンダメンタル分析

10年ファンダメンタル レーダーチャート

10年ファンダメンタル 得点表

流動比率が352%とキャッシュは潤沢であり,無理な負債に頼らずに店舗数拡大路線を継続できています。EPSの平均増加率は28%であり,成長が鈍化する兆しは見られません。

配当は2012年に一度出しましたが,無配に転じています。(株主還元策としては中途半端でいけません。)

5年平均 5年スコア 10年平均 10年スコア 満点
グロース株総合評価 225点 193点 400点
グロスマージン(粗利率) 34.7% 30 32.2% 30 40
営業キャッシュフローマージン 12.0% 0 11.5% 0 40
株主資本利益率(ROE)平均値(Net Income/Equity) 22.9% 15 20.5% 15 20
収益力評価 45点 45点 100点
営業キャッシュフロー増加率 17.5% 40 26.4% 40 40
フリーキャッシュフロー増加率 13.4% 32 -100.0% 0 32
EPS増加率 28.0% 28 28.3% 28 28
成長力評価 100点 68点 100点
自己資本比率平均値 60.7% 40 54.0% 40 40
流動比率(流動資産/流動負債) 352.0% 40 242.0% 40 40
クレジット格付け 0 0 0 0 20
財務健全性評価 80点 80点 100点
平均配当利回り 0.0% 7 0.0% 7 28
自社株買い利回り -1.3% 0 -3.1% 0 16
配当金増加率 -100.0% 0 -100.0% 0 28
配当性向(増配余地) 0.0% 0 0.0% 0 28
株主還元評価 7点 7点 100点
ブランド力 0 0 0 0 60
エコノミック・モート 0 0 0 0 40
定性的評価 0点 0点 100点

10年分析グラフ

営業CFは順調に成長していますが,一方で費用も結構嵩んでいます。支出の主な内訳は,新規出店および既存店舗の改装費用で,全体の4割を占めます。また,2015年はマーケティング費用の大幅増を見込んでいます。暫くは拡大路線に資金をつぎ込むということですね。

ulta-10yr-analysis

優良銘柄の条件

優良銘柄の条件 結果 判定 備考
条件3:他社と差別化できる優れた新製品を持つ  製品:×

サービス:○

基本はスタッフが差別化要素です。
条件5:主力製品の市場が長期的に拡大し続ける余地がある 美容品市場は拡大の一途です。
条件10:売上,営業キャッシュフロー,フリーキャッシュフロー,EPSのバランスがよい 小売りのためCFS, EPSは低めです。

スナップ・オン(SNA) 企業分析

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安定成長銘柄のスナップ・オン・インコーポレイティッド(SNA)について取り上げます。

スナップ・オン(SNA)は,工具メーカーとして世界的有数の企業です。近年,米国では車は「買い換えるもの(使い捨て)」から「修理して長く使うもの」という意識に変わりつつあります。(後述のデータ参照)そのお陰で,自動車メンテナンス産業は活況を呈しており,オライリー・オートモーティブ(ORLY)で部品を購入して,スナップ・オン(SNA)の工具を使って車のメンテナンスを行うといったことが盛んに行われています。

スナップ・オンの工具は永久保証を謳っており高価なだけあって顧客はプロが中心です。料理人が包丁にこだわるのと同じく,プロは道具にこだわるためスナップ・オンの高い品質・保証体制・ブランド力を活かしたマーケティングは成功を収めています。

将来的に見た場合,自動車文化が廃れることはまずあり得ないですが,自動車の構造自体は変化していくことが考えられます。例えば,エンジンはモーターに置き換わり,メカニカルな部品が電子部品+マイコンに置き換わるといった具合です。現在は過渡期に相当し,車の修理のうち半数以上の箇所は専用の診断ツールを使わないと不具合箇所が特定できないといわれており,昔と比べてそれだけ複雑化しています。こうしたニーズを巧くとらえ,新製品をリリースすることでスナップ・オンは好業績を維持しています。当然時代について行けなければブランド価値が剥落するわけで,継続的に市場ニーズの変化にキャッチアップしていくためにR&Dが要求されます。

企業ホームページ

Snap-on

セクター

資本財(工具)

企業状況

1920年創業の老舗企業で,プロ用の高級工具を販売しています。ソケットレンチの発明を始め,レンチの新製品が軍などのコア顧客のニーズにマッチし発展しました。2000年代には買収により欧州の老舗ブランドを多数参加に収めました。車両店舗による「バン・セリング」と無期限保証でマニアに高いブランド力を誇っています。

1939年以降配当を出していますが,減配や無配に転じたことはありません。(ただし,増配率は極めて低いですが。)安定した経営基盤を築いています。

保有ブランド

sna-brands

セグメント

主なセグメントは以下の三つで,それぞれが30%程度の売上を占めています。

(1) スナップオン・ツールズ・グループ
主な顧客は自動車修理工です。
(2) コマーシャル&インダストリアル・グループ
主な顧客は,プロのエンジニア(航空産業やプラントエンジニアリングなど含む)です。
(3) リペアシステムズ&インフォメーショングループ
主な顧客は,自動車修理ショップなどです。

sna-segment-2014

成長市場

米国での平均的な自動車の使用年数は1980年には7年間だったものが,2015年には11.5年間まで伸びています。この背景としては,自動車自体の性能・品質の向上による耐用年数の向上もありますが,基本的にはエコ意識の高まりを始めとして,長く使おうという意識が普及したということが挙げられると思います。不況を機に一時的に買い控えをしているというようなものではなく,長期的なトレンドです。

こうした耐用年数・使用年数の延長は,新車販売台数にはネガティブですが,自動車メンテナンス産業としてはポジティブです。スナップオンは当然このトレンドの追い風を受けます。

sna-vehicle-aging

 

競合状況

主要な競合は日本のマキタ,エマーソン・エレクトリック(EMR),スタンレー・ブラック&デッカー(SWK),インガソール・ランド(INGERRAND)などが相当します。

マーケットシェア

ソケット等の工具や故障診断ツールに関しては圧倒的なシェアを保持しています。

sna-shares

最近のマーケット状況

5年チャート

ここ5年間見事に押し目無しで上昇していましたが,2016年に入ってから大きな調整を迎えました。

sna-5yr-chart_20160311

日足チャート

直近ではカップ型のベースを形成しています。

sna-daily-chart_20160311_annotate

先四半期のキャッシュフロー

sna-4q-cf-20160311

直近株価評価

資産の成長率に対して株価は割高だと思います。(PERは15.4倍とそこまで高くはないですが。)

現状 スコア 満点
機関投資家比率 86.0% 15 20
機関投資家の売買動向 -2.8% 3 12
インサイダーの売買動向 -14.4% 3 12
現在の株価(資産に対する割安度) $152.8 0 20
現在のPER(Forward) 15.43 10 20
現在の配当利回り 1.6% 8 16
39点 100点

10年ファンダメンタル分析

10年ファンダメンタル レーダーチャート

高い成長を維持しています。これは自動車メンテナンス産業全般の地合いの良さに加えて,欧州ブランドの買収戦略が当たっているためです。

10年ファンダメンタル 得点表

営業CFマージンはやや低めですが,グロスマージンは48%とこの手のメーカーとしては非常に高いです。高いブランド力・マーケットシェアに守られているお陰だと言えます。2008年のリーマンショック以降,売上・利益共に打撃を受けましたが,それでも赤字になることはなく着実な成長を続けています。

5年平均 5年スコア 10年平均 10年スコア 満点
配当株総合評価 287点 267点 500点
グロスマージン(粗利率) 48.0% 40 46.6% 40 40
営業キャッシュフローマージン 11.1% 0 9.7% 0 40
株主資本利益率(ROE)平均値(Net Income/Equity) 18.9% 10 18.1% 10 20
収益力評価 50点 50点 100点
営業キャッシュフロー増加率 31.0% 40 9.4% 20 40
フリーキャッシュフロー増加率 44.1% 32 10.5% 32 32
EPS増加率 11.5% 28 17.0% 28 28
成長力評価 100点 80点 100点
自己資本比率平均値 48.9% 30 45.0% 30 40
流動比率(流動資産/流動負債) 262.3% 40 238.8% 40 40
クレジット格付け 0 0 0 0 20
財務健全性評価 70点 70点 100点
平均配当利回り 1.7% 14 2.6% 21 28
自社株買い利回り 0.0% 4 0.0% 4 16
配当金増加率 11.1% 28 7.4% 21 28
配当性向(増配余地) 26.9% 21 28.9% 21 28
株主還元評価 67点 67点 100点
ブランド力 0 0 0 0 60
エコノミック・モート 0 0 0 0 40
定性的評価 0点 0点 100点

10年分析グラフ

ここ10年でじわじわと利益率が上昇しています。売上についても今後も安定した成長が見込まれます。

sna-10yr-analysis

優良銘柄の条件

優良銘柄の条件 結果 判定 備考
条件3:他社と差別化できる優れた新製品を持つ 無期限保証が大きな差別化ポイントですが,機能的に特別というわけではありません。
条件5:主力製品の市場が長期的に拡大し続ける余地がある 軍・自動車・航空産業の裾野産業と言えます。
条件10:売上,営業キャッシュフロー,フリーキャッシュフロー,EPSのバランスがよい EPS>フリーCFとなっている年が多いのが懸念点です。

バフェット流 「先頭を走る亀」に投資する

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亀同士のレースでは,先頭を走る亀が有利

ウォーレン・バフェットの保有する銘柄の多くは,変化が遅いセクターに属しています。例を挙げるならば,ウェルズ・ファーゴ(WFC),アメリカン・エクスプレス(AXP)は金融セクター,コカ・コーラ(KO)は飲料,クラフト・ハインツ(KHC)は食品,ウォルマート(WMT)は小売り,プロクター&ギャンブル(PG)は生活必需品セクターなど。(傘下に収めている企業でいえば,ガイコ(GEICO)は自動車保険セクター,バークシャー・ハサウェイ・エナジーはエネルギーセクター,バーリントン・ノーザン・サンタフェ(BNSF)は公益セクターなど。)

なぜバフェットが変化が遅いセクターの株をわざわざ集めているかというと,ひとたびリーダーに上り詰めた企業を追い落とすことが非常に難しいからです。具体例を挙げるならば,コカ・コーラ(KO)に並ぶ飲料メーカーやP&G(PG)に並ぶ生活必需品メーカーを作るには,数十年〜百年単位の時間がかかることは想像に難くないと思います。(コカ・コーラの創業は1892年で100年以上昔です。)変化が遅い=守りに入ったリーダー企業に圧倒的に有利だと言えます。

先頭を走る亀が有利な理由

次に,変化が遅いセクターには,バフェットが好む特徴があります。

・設備投資が少なくて良い

変化が遅いということは,イノベーションが少ないわけですから基本的には設備投資はテクノロジーセクターなどに比べて圧倒的に少なくて済みます。バフェットは投資した資金がどれだけリターンに結びつくかという観点から,設備投資(に対する出費が嵩むこと)を嫌います。

・将来のビジネスモデルの予測が可能

飲料や生活必需品や金融は百年後のビジネスモデルも現在と大して変わるとは思えません。「製造・流通・小売り・宣伝」というシンプルながら強力なビジネスモデルを続けていくだけでよいので,リスクが低いです。

・広告宣伝費への多大な投資が可能

バフェットはブランドを好みます。ブランドとは一言で言えば多くの人に認知され,信頼され,その結果,高値を出しても買いたいと思わせる無形価値のことです。そして,ブランドを創造するには何十年もの歳月と競合よりも圧倒的に多大な広告宣伝費が必要です。

例を挙げるならば,当サイトの評価でブランド価値No.1となっているのはコカ・コーラ(KO)ですが,オリンピック公式スポンサーを始め各種イベントの後援やTV CMなどで常にプレゼンスを高める努力をしています。広告宣伝費用は年間$3B(日本円で3300億円)にも上り,売上の7%に相当します。もし,競合企業が飲料水分野でコカ・コーラに並ぼうと思えば,コカ・コーラを上回る年間4000億の広告宣伝費を数十年にわたって継続して出費する必要があります。とてもじゃないですが,なかなか出来るものではありません。優れた新製品を出すだけでは後発企業は追いつけないというのが,変化の遅いセクターでリーダー企業が圧倒的に有利な理由です。

こうした「ブランド価値を高めるための投資」をウォーレン・バフェットは好んでいます。投資が企業価値を高め,更なる売上や利益に繋がることが期待できるからです。

先頭集団を走る亀を見つける

とはいえ,コカ・コーラ(KO)やP&G(PG)などウォーレン・バフェットが既に保有している銘柄の多くは有名になりすぎたために,企業価値に対して株価が高値になっていることが多いです。ベストなのはこれらの銘柄が何らかの理由で割安になるタイミングですが,そうでなければバフェットが持っていない銘柄で,先頭集団を走る亀に投資する手があります。以下で列挙する企業は,今後も数十年に渡ってブランド価値を維持し続けることが可能な企業ばかりです。

 

小売りであればコストコ(COST),ホーム・デポ(HD)

食品であればマコーミック(MKC),ハーシー(HSY),キャンベル・スープ(CPB),

飲食店であればマクドナルド(MCD),スターバックス(SBUX)

生活必需品であれば,コルゲート・パーモリーブ(CL)やユニリーバ(ULVR),

飲料であればペプシコ(PEP),ブラウン・フォアマン(BF.B),

タバコであればアルトリア・グループ(MO),レイノルズ・アメリカン(RAI),フィリップ・モリス(PM),

一般消費財であればナイキ(NKE),VFコープ(VFC)

エンターテインメントであれば,ウォルト・ディズニー(DIS)

ヘルスケアであればファイザー(PFE)やブリストル・マイヤーズ(BMY),など。

 


行動経済学で心をコントロールする(1) ストレス

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一流の投資家のパフォーマンスを左右するのは「心理」だと言われます。今回は行動経済学を用いて心をコントロールする方法について書いてみようと思います。(アイキャッチ画像はTraderfeedのブレット・スティーンバーガー博士)

投資はストレス

米国株への投資は日本株への投資に比べて格段にハードルが高いです。日本株に投資していれば一切不要な,言葉の壁(英語情報),時間の壁(時差),文化の壁(地理的・歴史的差),情報の壁(情報伝達の遅さ)といったさまざまな「壁」を乗り越えて初めて,一人前の米国株投資家に成長することができます。

こうした「壁」は投資家にとって大きなストレスです。ストレスというのはうまく作用すれば発憤材料となり人を成長させてくれますが,うまく処理できない場合「ディストレス」(不快なストレス)となって私たちのメンタルを蝕みます。具体的には無力感に駆られて市場から撤退してしまったり,不安感に駆られて利喰いしてしまったりといったことが挙げられます。これは非常にもったいない。

まず重要なのは,ストレスを感じるのは投資する上で「必然」です。

以下に示す図は,投資センチメントサイクルとビジネスサイクルのギャップを表したものです。ビジネスサイクルが絶頂を迎えたのち下り坂に入ってから,投資家のセンチメントはピークを迎えます。センチメントはビジネスサイクル(企業業績)の遅行指標なわけです。ということは,投資家の予想が外れるのも無理ありません。時間的に数ヶ月のギャップがあるのですから。業績発表自体が最大四半期のずれがありますし,私たちの情報伝達や認知速度にも限りがあるのでどうしても「正確に業績やマーケットを把握する」ことは難しいのです。この事実を受け入れることから心のトレーニングが始まります。

Behavioral-Investor

これは米国株投資する私たちだけに限った話ではありません。本場米国においても投資家のストレスは非常に大きいらしく,『悩めるトレーダーのためのメンタルコーチ術 (ブレット・N・スティーンバーガー)著』では,トレーダーの陥りやすいさまざまな心理的トラップに対する対処法を解説してくれています。生粋のアメリカ人の投資家でさえ投資の際に大きなストレスを抱えているのですから,日本人の私たちが日々感じるストレスはアメリカ人の比ではありません。

感情そのものはコントロールできない

多くのトレーダーが陥る罠は,思考で感情をコントロールしようとすることです。これは典型的な間違いで,感じ方というのは意志力(自制心)では抑えられません。私たち投資家がすべきことは,自分がどういうときにどう感じやすいかを自覚し,たとえ不安やいらいらを感じていたとしても条件反射で意思決定しないことです。要は,感情ではなく行動をコントロールすることです。How do you feelではなくHow do you behaveが問題なわけです。

感情と行動を記録し,目標を立てる

こうした感じ方や行動の仕方の癖は,各個人でバラバラです。たとえば,株価が上昇していたら目標価格を超えても利喰い出来ない強欲タイプから,損切り出来ない優柔不断タイプまで。自分の癖を自分で見抜くにはトレード時の日誌がお勧めです。特に失敗したトレードでどういう行動・感情・思考だったかを詳細に記録し,自己改革に結びつけるのが,一流トレーダーへの近道だとスティーンバーガー博士は言います。大損するのは恥ではなく,大損から学ばないのが三流トレーダーというわけです。

トレード日記の三要素
・行動パターン:特定の状況での行動の傾向(行動の癖)
・情動パターン:特定の出来事に対する反応で,特定の気分や状態に陥る傾向(右脳の癖)
・認知パターン:特定の相場状況に直面したときに,特定の思考パターンに陥る傾向(左脳の癖)

日記を読み返すことで,損切りをしたときに尾を引きやすい等の情動パターンや,思い通りの値動きにならない場合に投げやりになりやすい行動パターンが明らかとなります。こうした情動パターン・行動パターンを意識的に避けるための方法が,「投資規則」の策定です。

ウォーレン・バフェットがバークシャー・ハサウェイ(繊維企業)を買収して大失敗したように,一流の投資家もみな早い段階で手痛い失敗をし,その失敗から学んで立ち直ることで成長しています。バフェットの名言集が大人気なのは,それだけバフェットが自分の陥りやすいミスを普遍化して分かりやすい言葉で語ってくれるからです。

重要なのは,失敗を失敗と認めること。(自己正当化しては成長できません。)

そして,失敗にはパターンがあることを認めること。(各個人の「弱点」とも言える部分です。)

最後に,失敗パターンを避ける投資規則を作ること。(個人の感じ方にも依存するので,オリジナルな規則を作る必要があります。バフェットら先人の教えは参考になりますが,最適な規則は自分で作るしかありません。)

また,投資規則を作ったとしても自分で破ってしまうこともよくあります。規則に従えなかったことも「事実」として認め,さらに規則を改良していくという長期的な学習が必要です。

参考文献

参考書籍1:『悩めるトレーダーのためのメンタルコーチ術 (ブレット・N・スティーンバーガー)著

ブックレビューにある通り,基本的には投資心理を学ぶベストの書籍だと思います。翻訳も非常に分かりやすく,読んでいてストレスを感じません。

参考書籍2:『Misbehaving: The Making of Behavioural Economics(Richard H. Thaler著)

原油価格と株価のカップリングは続く。その理由。

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以前の記事で,株価と原油価格の相関について検討しました。その結論としては,「強い相関あり」でした。

その続報となりますが,いまだに米国株価と原油価格はカップリングしていると言えると思います。

以下のチャートはここ60日間のS&P500(SPX),ダウ平均(DJI),そして原油価格(WTI)を並べたものです。コモディティと株価と言うことで値動きの粗さは異なるのですが,依然として原油価格が上がった日には株価が上がる,原油価格が下がった日には株価が下がるという相関は強く出ています。原油価格の二番底のチャート形状と株価の二番底の形状がそっくりです。底のタイミングもずれていません。

また,2月中旬以降の原油価格の上昇と足並みを揃えるように,株価も急騰しています。

WTI_DJI_SPX

Marketwatchでも原油と株価の強い相関について記事があります。以下の相関チャートを見ても分かる通り,今年に入ってから相関係数が急上昇しています。Wall Street Journalによれば,これだけ強い相関は26年ぶりとのこと。

MW-EF953_1CopyC_20160221211102_NS

なぜこんな奇妙な現象が起きているかという理由を探る前に,ロシアの株価のチャートを見てみましょう。見事に原油価格に引っ張られています。米国の比ではありません。

Russia_WTIC_Correlation

このチャートを見て直観しました。米国株の値動きはすでに資源国の株価チャートと同じ傾向を示すと言うことです。もちろん,理屈上はそんなはずはありません。エネルギー産業がGDPに占める割合はロシアなどとは比べものにならないほど小さいです。(ロシア:GDP比25%,米国:GDP比6%)

それにもかかわらず,これだけ相関が強いというのは,投資家が米国を「資源国」だと見なし始めていることを象徴しているのだと思います。

この「資源国」だというのは資源が経済を左右するということを意味します。具体的には,極端なエネルギー価格の下落は,米国のエネルギー産業(シェールオイル企業など)や雇用を破壊し,大打撃を与えると見ていることに他なりません。(不可逆的な打撃とまで言いませんが,数年間にわたって尾を引くことになる打撃でしょう。)

当初想定されていた,エネルギー価格下落によって米国消費者の家計黒字が増えて消費が増える効果よりも,エネルギー価格下落によるダメージの方が大きいという判断が「米国は資源国」扱いに繋がっているのだと思います。

個人的には,原油価格は1バレル$20を割り込むぐらいまで下落すると予想しリスクオフしていますが,その予想は大きく外れ1バレル$40を超えました。結果的に,資源国米国はダメージを免れたということで現在の株価が急騰しているのだと思います。

世間でのリスクオフムードは,FRBイエレン議長の利上げ延期宣言により確実なものとなりました。今年前半に賭けての株価および原油価格は堅調に推移すると思います。そういう意味で,原油価格と株価のカップリングは当面継続し,また再び中国経済鈍化などのニュースで原油価格下落のリスクが顕在化した場合は米国株価も下落すると思います。

ナイキ(NKE) 2016Q3決算

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ナイキ(NKE)は私の10年ファンダメンタル分析においてS&P500,S&P MidCap400合わせた900銘柄中第一位に輝く超優良企業です。スポーツブランドとして北米ではシェア5割を占めており,ワイドモート企業だと言えます。

今回はナイキの2016Q3の決算を見て行きましょう。

企業概要

世界最大のアスレティック・アパレルメーカーです。売上の6割はAir Maxシリーズをはじめとするシューズであり,浮き沈みの激しいアパレル分野の中でも堅実な販売・成長を見込める点が特徴です。(アンダーアーマー(UA)は高機能素材を多用したアパレルがコアなのとは対照的です。)

決算日

2016年3月22日

決算資料

Nike 2016Q3

決算概要

 2016Q3決算数字

コンセンサス 結果 サプライズ(%) 評価
EPS($)  $0.4848 $0.550  +13.4%
今期売上高($) $8.20B $8.03 -2.0%  ×
前年同期比
売上高成長率(%)
前年同期
$7.46B
YoY +7.67%
グロスマージン 45.9% YoY変わらず
来期EPSガイダンス($)

 2016Q3決算サマリー

売上はYoYで+7.67%増加しました。(為替の影響を除くとYoYで+14%の増加でした。会社側の発表ではドル高の影響で-6%下がったとのことですが,2015年12月の利上げ以降大幅なドル安が進んでいることを考えると,素直には受け取れない数字です。会社側の為替の基準が緩すぎると思います。)
利益はYoYで+22%増加しました。売上増もありますがグロスマージンが伸びていないので,自社株買いを強化していることも大きく影響していると思います。
在庫は+8%増加しました。在庫増の原因はオンラインでの直売に力を入れたことによる新規在庫が主要因のようです。今のところ売り上げ不振による在庫増とは判断していません。
・販管費がYoYで+8%増加し,$2.6Bとなりました。(対売上比で32%に相当します。)販管費増加の主な理由は,直売分野への投資,広告宣伝費の増加,ブランドイベントの増加によるものです。
・Q3の期間中,自社株買いを$1.5B相当行いました。(4年間で$8B相当の自社株買いプログラムを実施予定)自社株買いの平均購買価格は$58.66でした。1月2月の安値を買い支えていたことになりますね。

地域別

・西ヨーロッパおよび新興国において為替の影響もあり,売上が伸びませんでした。
・一方中国ではYoY+43%,日本ではYoY$+64%と大きく売上が伸びています。
(既に中国市場での売上が日本の10倍に迫ろうとしています。日本におけるナイキのプレゼンス低下は実感していましたが,これだけ規模が違えばナイキが中国に力を注ぐのも分かりますね。)

nke-2016q3-regional

ナイキ+

余談ですが,ナイキはNike+と呼ばれるパーソナルサービスアプリを開発しています。これは,シューズやスマートフォンのGPS機能などを使用してユーザーのアクティビティをモニターしてくれるものです。言ってみれば,ウェアラブルとビッグデータを活用するサービスですね。

将来的にはフィットビット(Fit)などのような個々のデバイスメーカーよりも,ナイキやアディダスのようなアスレティックブランドの方がウェアラブル市場で成功しやすいと感じています。何故かと言えば,顧客が望んでいるのはデバイスそのものではなく,「スポーツパフォーマンスを最大化してくれるサービス」だからです。デバイスそのものの優劣は実はそれほど重要ではありません。それゆえ,ウェアラブル市場は,ナイキやアンダーアーマーにとって大きなビジネスチャンスになると思います。

投資データのバックアップの重要性

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自宅のMAC OSアップデートに失敗してHDDのデータはすべて吹っ飛んでしまってしばらく投資を休んでいました。幸いにして投資関係の情報の中でも分析シートは,普段Googleスプレッドシート上で保管していたため無事でしたが,その他のPDFファイルなどは無くなってしまい非常に残念でした。

今回の一件で,投資家として最大のリスクは「相場に参加できないこと」だと感じました。相場に参加できない理由には,病気,怪我,心神喪失,本業の多忙さなどいろいろありますが,インフラも重要です。というのも,投資を行う上ではデータが命だからです。私の場合はバフェット流の長期財務諸表分析が投資判断の7割がたを占めており,参考になる文献やデータが手元にないとどうも場に立つ気力がわきません。

今回は投資家としてのリスク管理の一貫として,データのバックアップについて書きたいと思います。

データの種類

投資データには大きく分けて2種類あり,簡単に入手できるもの,なかなか入手できないものがあります。

前者はたとえば,MorningstarYahoo Financeの株価チャートや四半期決算データです。これらのデータはバックアップは必要ありません。(ローカルに落としておけば便利ではありますが,必須ではありません。)

一方,後者は,有料サイトのデータであったり,複数のサイトから情報をかき集めて整形したデータ(私の場合は,増配銘柄情報ブランド力情報,など)です。こうした入手困難・加工面倒なデータは必ずバックアップをとりましょう

その他,書籍や雑誌,新聞など活字媒体もありますが,これらは火事でもない限り無くなる心配がないので一番安全です。

データの保存方法

今回,結果的に一番信用できるのはオンラインストレージであると感じました。その中でもおすすめは,Googleドライブです。2016年3月時点では15GBまで無料で保存でき,また最強の分析ツールGoogleスプレッドシートも使えます。

google_drive

難点はどうしてもネットワークを介してアクセスするために,ブロードバンドでなければレスポンスが遅い点ですが,今時は大して問題にならないと思います。詳しい使い方はatmarkitに書かれていますので,まだ使っていない方は是非おすすめします。

クラウドについては今までIBM(IBM)やマイクロソフト(MSFT),グーグル(GOOGL)の分析をした際に調べていたのですが,自分の身でありがたみを実感すると見え方も変わってきますね。

有機的成長と無機的成長

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企業の成長戦略を分析する上で,有機的成長・無機的成長の区別が重要です。それぞれ,以下のように定義されています。

  1. 有機的成長(Organic Growth);既存事業の成長によって達成される成長
  2. 無機的成長(Inorganic Growth);買収・合併など新しい事業の獲得によ って達成される成長

成長ステージ

企業というのは植物のようなもので,若いうちは肥料(増資)をやればやるほど勢いよく育ち(売上・利益)ますが,ある程度大きくなってしまうと成長が鈍化していきます。そして,成長期を終えるとあとは成熟期に入り,規模を維持し続けるか,あるいは徐々に衰退していくかという一生をたどります。

enterprise_life_cycle

企業の成長ステージ

  1. スタートアップ:いわゆるベンチャーキャピタルなどが丸抱えで企業を創設する時期です。アイデア・コンセプト・ストーリーを買うという意味で,投資家としては最も面白い時期です。
  2. 成長期:上場に成功した後,着実にコンセンサス以上の業績(特に売上成長)を積み上げていくことが必要な時期です。指数関数的な売上成長(で利益は赤字)期を過ぎると徐々に売上も利益も順調に出るようになっていきます。この時期には広く市場に認知され,多くの機関投資家・個人投資家が参戦してきます。
  3. 成熟期:各セクターの首位集団になり一定のシェアを獲得してしまうと,それ以上は競争が厳しくなり右肩上がりの成長は難しくなっていきます。シェア自体は均衡し,セクター自体の成長率とほぼ同じ成長率になってきます。
  4. 衰退期:セクター自体が衰退市場であったり,競合企業に敗れたりして徐々に売上・利益がコンセンサスを下回ってくる時期です。市場自体が衰退傾向であったとしても競合が少ない寡占市場であれば,売上減・利益増ということは可能ですが,限られています。(たばこ産業など)
  5. 再生期:セクター成長率・競争の厳しさを考えて本業の成長が見込めない場合は事業を再編する必要に迫られます。これが有機的成長の限界点です。
    買収や合併,あるいは企業分割によって不採算事業を切り離すことで再び成長路線に戻すことが必要です。成熟期・衰退期にため込んだ内部留保を活用して,買収による多角的経営に進む企業もあれば,売却によってスリム化する企業もあります。これが無機的成長です。

企業というのは主力製品の集合体なので,製品のライフサイクル(下図)を見てもらうのが分かりやすいでしょう。基本,新製品を発売した当初は利益は出ませんが,一定の販売数を超えると損益分岐点を超えて爆発的に利益が増える時期が来ます。(いわゆる,投資を回収できた時期。)

主力製品もいずれは売れ行きが不振となってくれば,別の新製品の開発が必要となります。

product_lifecycle

株における成長分析

多くの会計の教科書に書かれているように,有機的成長率と無機的成長率は以下の計算で求めることができます。

  1. 有機的成長率=ROE×内部留保率=ROE×(1-配当性向)=EPS/株主資本×(1-配当性向)
    要するに,一株上がりの利益(EPS)のうち配当に回さなかった部分(内部留保分)は企業内部に現金等の形で蓄えられます。企業の所有者は株主なので,株券の価値が向上することになります。
  2. 有機的+無機的成長率=EPS成長率=純利益/株主資本の成長率 または
    有機的+無機的成長率=BPS成長率=総資産/株主資本の成長率
    買収や合併,分割により企業の利益や資産は変動します。これらの変動は決算書のバランスシートから求めることができます。個人的には赤字企業にも使えるBPSベースでの計算を好んで使っています。EPSはマイナスに振れることもあるのに対して,BPSは基本は大きく変動しないためです。(あくまで傾向を見るため)
  3. 無機的成長率=2−1

この二つの違いは重要です。なぜなら,経営者の手腕と企業の将来への見通しをこれらの数字から把握することができるからです。

例を見てみましょう。

アップル(AAPL)の場合

2006年からの10年間の数字は以下の通りです。

有機的成長率(ROE x 内部留保率) 29.9%
無機的成長率(BPS成長率) 30.6%

数字はほぼ同じです。基本的にアップルは本業の成長によりここ10年急成長を遂げてきたと言えます。有機的成長企業ですね。

アルトリア・グループ(MO)の場合

2006年からの10年間の数字は以下の通りです。

有機的成長率(ROE x 内部留保率) 13.8%
無機的成長率(BPS成長率) -22.8%

なぜ有機・無機の差がこんなに大きくなるのでしょうか?

その理由は,アルトリア・グループが2007年にクラフト・フーズ(KHC)をスピンオフ,さらに2008年にフィリップ・モリス(PM)をスピンオフしたことによります。この二つの「企業分割」でBPSは約1/15にまで縮小されました。

BPSだけを見ているとアルトリア・グループ(MO)の企業サイズが小さくなっているので失敗に思えますが,EPSに着目するとまた違った面が見えてきます。BPSが1/15になった一方,EPSは1/3程度にしか下がっていません。すなわち,アルトリア・グループの中核事業である高収益のたばこ事業の利益がそのまま企業業績として見えるようになったため,ROEは2006年の31.9%から2009年の93.0%まで3倍に伸びています。株主にとって嬉しい有機的成長企業として再生できたことになります。

(注:もともとアルトリア・グループはここ70年間で見ても多角的経営時期を含めて超優良企業であり,スピンオフのことを再生という言葉で呼ぶには語弊がありますが,分かりやすい高ROEは投資家の注目を集める上で成功だったと思います。)

 

以上のように,企業の成長率を分析する上で,有機的成長率・無機的成長率の数字を追いかけていけば,その企業の経営者が①本業の成長自体を推進するのが得意なタイプ(スティーブ・ジョブス),②事業再編によるポートフォリオ改善が得意なタイプかといったことが判断できます。

アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)

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アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)はアマゾン(AMZN)が提供するクラウドコンピューティングサービスです。

先日の「YUTAの米国株投資」さんで取り上げられていたクラウドサービス事情を読んで,AWSはパブリック・クラウド分野では先行しており,この状態をキープできればネットワーク効果によりますます強固なモートを形成することが可能だと判断しています。長期的な推移を見守っていきたいと思います。

さて,アマゾンのJames Hamilton氏のサイトに「イノベーションの10年(A Decade of Innovation)」という記事が投稿されていたので一部抜粋して紹介します。ちなみに,James Hamilton氏は元々は一般のユーザーとしてアマゾンのコミュニティーに関わっており,その後,アマゾンに転職してAWSの開発を行うようになったという経歴の持ち主です。クラウドコンピューティングの短い歴史をうまくまとめてくれています。

イノベーションの10年(A Decade of Innovation)

March 14, 2006 was the beginning of a new era in computing. That was the day that Amazon Web Services released the Simple Storage Service (S3). Technically, Simple Queuing Services was released earlier but it was the release of S3 that really lit the fire under cloud computing. I remember that day well. At the time I was General Manager of Frontbridge Technologies, a wholly owned subsidiary of Microsoft that provided cloud hosted email antispam, antimalware, and archiving services. From this experience, I felt like I understood the customer value of cloud hosted services. I knew customers loved the speed of provisioning and low cost so, in many ways, I was already a convert. I already felt pretty sure that cloud hosting was the future.

2006年3月14日にコンピューティングの新しい時代が幕を開けました。その日はアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)がシンプル・ストレージ・サービス(S3)を発表した日です。S3の発表はクラウドコンピューティング分野に火をつけました。

その日のことはよく覚えています。私(James Hamilton氏)はマイクロソフトの完全子会社であるFrontbridge Technologiesのジェネラル・マネージャーでした。Frontbridgeはクラウド上でE-mailスパム対策やマルウェア対策,データ保存サービスなどを提供していました。そうした経験から,クラウドサービスの顧客価値を理解していました。

顧客は高速で低コストに提供されるクラウドリソースを気に入っていました。いろんな意味で私はすでに改宗者(クラウド信者)でした。クラウド・サービスに大きな未来があることを確信していたのです。

But still the Amazon Simple Storage Service announcement was an eye opener for me. The technology industry has 100s of announcements each day and I don’t look at many. For the most part, they are uninteresting. But the S3 announcement was game changing. Most startling was the cost of the service. It was nearly 2 orders of magnitude less expensive than we were currently paying for multi-data center redundant storage. But what was even more disruptive was a credit card was all that was needed to provision storage. There was no required proposal for financial approval, there was no RFP, no vendor selection process, no vendor negotiation, and no data center space need be found. I could just sign up and start working.

しかし,それでもアマゾンのS3の発表には驚かされました。テクノロジー業界は毎日数百もの新発表があり,その大半は大して面白くもありません。しかし,S3の発表は革新的(Game Changing)でした。最も驚かされたのはサービスのコストです。それまでマルチ・データセンターに対して払っていた値段よりも二桁も安かったからです。

※アマゾンは後発ながら圧倒的な価格破壊戦略を持ってクラウドコンピューティング分野に乗り込んできたことがわかります。ジェフ・ベゾスお得意の「損益分岐点を変えて体力勝負に持ち込む」の成功例です。

しかし,さらに破壊的だったのは,クレジットカード一つでストレージを借りることができることでした。財務チェック,システム提案書,ベンダー選定書,データセンターのスペースといったものが何一ついらなかったのです。ただ,サインアップするだけで使い始めることができました。

※アマゾンは無駄の排除に関しては徹底しており得意分野です。顧客に手間がかからず,安くサービスを提供するということは,流通業界でもすでにおなじみですが,既存のベンダーであるオラクル(ORCL)やIBM(IBM)からすると脅威な存在だったと思います。実際,その後アマゾンに続いて各社,クラウドサービスに本腰を入れています。

What was at least as notable as the low cost and ease of provisioning was that the announcement came from Amazon rather than a traditional enterprise IT player. Rather than a company that is dedicated to high margins, difficult negotiations, and sometimes even license usage audits, this service came from Amazon. What looks to be “large” margins at Amazon would have shareholders at most enterprise IT companies calling for immediate management change. This really was different. A different supplier, a different model, a low friction provisioning path, and a fundamentally different price that starts low and falls rather than escalates over time.

伝統的なIT企業ではなく,アマゾンからこうした低コストで便利なクラウド・リソースが提供されたことについてはあまり驚きませんでした。高マージンで,価格を値切らない,ライセンスの使用状況について監査してくるような企業ではなく,(部外者の)アマゾンからS3サービスは生まれました

多くのIT企業の株主はすぐにやり方を変えるようにと会社に訴えました。これは難しい問題でした。サプライヤーも違えば,ビジネスモデルも違う企業が根本的に違う価格で戦うわけですから。それも,時間をかけてじわじわと価格が下落するのではなく,暴落したわけですから。

The S3 announcement generated industry-wide interest and wonderment on how it would be possible, for even a very high volume supplier, to not lose money on every single byte sold. I was completely captivated by the offering and ended up writing several thousand lines of code using S3 as the underlying storage system. At times it was a bit clunky, there was the odd sharp edge, but writing the app really established in my mind that this was the beginning of something big.

S3の発表は業界全体で注目され,いったいどうやってそんなことが可能なのかといぶかしがりました。私はアマゾンのオファーに完全に魅了され,S3を使って数千行のコードを書くようになりました。S3は使いにくいこともありましたが,アプリを書いているうちに「これは何かとてつもなくでかいことの始まりだ」と思うようになりました。

From deciding to write the app to it being up and running was measured in days and, after debugging and testing extensively, the end of the month rolled around and I got my Visa bill. Of course, I knew abstractly that S3 was disruptively priced but when I saw that my bill for the entire development and test of this application was $3.08, it just seemed wrong. Once development was complete I was still storing all the test data in S3 so the following month I got a bill for $0.07.

アプリをデバッグしたりテストしたりしているうちに月末になり,Visaカードの請求書が来ました。もちろん,S3はべらぼうに安い価格なのは漠然とは知っていました。しかし,請求書を見たところ,開発およびテストの分のコストはたったの$3.08。何かの間違いだと思いました。

さらに開発が終わってその翌月もS3にテストデータをおいていましたが,その請求額もたったの$0.07でした。

This was so game changing that wrote it up, blogged it internally where I worked, and demoed it to company leadership including the CTO and CEO. My presentation included a picture of Al Vermeulen, one of the early developers on S3, showed some of how S3 worked and, to underline my point that this really was different, I included my two AWS bills. My key point was this wasn’t just a stunt or a fun little experiment by Amazon but was really a fundamental new way of delivering infrastructure services. Storage was first but compute was to follow shortly.

S3の価格破壊は業界を一変させる出来事であり,社内でCTOやCEOなどの幹部にも伝えました。私が伝えたかったのは,アマゾンが根本的に新しい方法でインフラサービスを提供しているということでした。ストレージが最初のサービスでしたが,すぐ後にはコンピューティングサービスも追随しました。

I got increasingly interested in AWS and by 2007 was attending user group meetings, doing presentations at Amazon, and eventually I just gave up and joined the team in late 2008.

私はますますAWSに興味を持ち,2007までにユーザーグループに参加するようになり,最終的には2008年末にアマゾンに加わりました。

As a member of the AWS engineering team, my first impressions are probably best summarized as fast. Decisions are made quickly. New ideas end up in code and available to customers at a speed that just makes the pace of enterprise IT look like continental drift. In a previous role, I remember (half) jokingly saying “we ship twice a decade whether customers need it or not.” Now new features are going out so frequently they are often hard to track.

AWSエンジニアリングチームのメンバーとして最初に感じたのは「速い」ということでした。決断はすぐにくだされ,新しいアイデアはすぐに実装され,顧客に提供されるのです。その速度といったら,ほかのIT企業は大陸移動(遅々として動いているように見えない)でもしているかのようでした。前職では,半分冗談交じりでこう言ったのを覚えています。「顧客が必要としているかどうかにかかわらず,5年に一度新製品を出荷する」いまや新しい機能は頻繁に更新され,ついて行くのも難しいほどでした。

Another interesting aspect of AWS is how product or engineering debates are handled. These arguments come up frequently and are as actively debated at AWS as at any company. These decisions might even be argued with more fervor and conviction at AWS but its data that closes the debates and decisions are made remarkably quickly. At AWS instead of having a “strategy” and convincing customers that is what they really need, we deliver features we find useful ourselves and we invest quickly in services that customers adopt broadly. Good services become great services fast.

 

もう一つのAWSの面白い側面は,製品や技術的な議論がどうやって行われるかでした。議論のテーマはどんどん湧いてきて,どの会社よりも議論が活発でした。白熱した議論は驚くほど素早く結論にいたり,議論の決着をつけるのはAWSのデータでした。AWSでは,「戦略」を持つのではなく,顧客が本当に必要としていることを明らかにし,自分たちにとって便利だと思う機能を提供し,顧客が広く受け入れてくれるようなサービスを提供します。よいサービスが,すぐにすばらしいサービスになりました。

※戦略とは仮説に基づいた物事の進め方のことだと思いますが,AWSでは仮説→検証のプロセスをきわめて高速で回しているのだと思います。また,AWSエンジニア自身もユーザー目線を持っていることが特徴的です。

In some of my past roles, I’ve seen these healthy debates become bigger than life and end up dragging on unproductively for years. At AWS they are resolved in days with customer usage data and the focus swings quickly to execution. It’s really refreshing to have the normal debate to delivery equation turned upside down. Most of the effort at AWS ends up in customer hands whereas, at many jobs I’ve held, much of the effort is in bringing these competing internal efforts to resolution. The AWS speed of delivery is great for customers and I find it an exciting environment for engineers.

前職では,健全な議論がだんだんと大きくなり,何年にもわたって非生産的にだらだらと続けられるのを見てきました。AWSでは,顧客の使用データをもとに数日で問題を解決し,すぐに実行に移されます。AWSのサービス提供のスピードは顧客にとってすばらしいものであり,エンジニアとしてもエキサイティングな環境だと感じています。

The best proof of innovation is customer commitment and, without a doubt, the highest form of customer commitment is to decide to run the entire company on cloud infrastructure. Netflix was the first to publically make the decision to go 100% cloud. Some of my favorite examples of cloud “all in” corporate commitments:

AWSのイノベーションのすばらしさを証明するには,顧客が気に入ってくれていることを示すのが一番でしょう。以下の企業は,すべてのサービスをアマゾン・クラウド・インフラストラクチャー上で動かしています。Netflixが100%クラウドに移行した最初の企業でした。

  • 2010 Netflix
  • 2013 Kempinski Hotels
  • 2013 Suncorp Group
  • 2014 Infor
  • 2014 Nippon Express
  • 2014 Notre Dame University
  • 2014 National Democratic Institute
  • 2015 The Guardian Media Group

From my perspective, the companies that have decided to go with cloud only infrastructure are the most interesting and the most compelling examples of the massive change sweeping the industry. But, as an example of the AWS speed of innovation, check out some of the highlights over the last decade:

私から見るとインフラをクラウドオンリーにすることを決断した企業は,最もおもしろく業界が激変していることを表してくれている好例だと思います。ここで,AWSのここ10年のイノベーションの速度を示すハイライトを紹介します。

2006

  • 2006 Amazon S3
  • 2006 Amazon SQS
  • 2006 Amazon EC2

2007

  • 2007 AWS introduces commerce platform for AWS, rapidly accelerating adoption, Amazon FPS
  • 2007 Amazon S3 in EMEA
  • 2007 Amazon Simple DB

2008

  • 2008 pricing plan for Amazon SQS and new WSDL (1st price drop)
  • 2008 Elastic IP Addresses
  • 2008 Availability Zones for EC2
  • 2008 AWS adds Premium (enterprise) support
  • 2008 AWS Lowers Data Transfer Costs
  • 2008 Amazon Elastic Block Storage
  • 2008 EC2 SLA and GA, EC2 for Windows, EC2 for SQL Server
  • 2008 New Tiered Pricing for Amazon S3
  • 2008 Amazon CloudFront
  • 2008 EC2 in Europe (Ireland)

2009

  • 2009 AWS Management Console
  • 2009 New lower pricing tiers for Amazon CloudFront
  • 2009 Amazon FPS
  • 2009 Elastic MapReduce
  • May 2009 Elastic Load Balancing,
  • May 2009 Amazon Autoscaling
  • May 2009 Amazon CloudWatch
  • 2009 AWS Virtual Private Clou
  • 2009 New lower prices for Amazon EC2 Reserved Instances
  • 2009 New lower prices for Windows instances with authentication services
  • 2009 AWS enters the database market with Amazon Relational Database Service
  • 2009 Lower Amazon EC2 on demand pricing
  • 2009 EC2 Spot Instances
  • Dec 2009 AWS S3 Pricing reductions, Free Inbound Data Transfer until 6/30/2010
  • 2009 Amazon CloudFront Streaming
  • 2009 AWS US West Region

2010

  • 2010 Lower Pricing for Outbound Data Transfer
  • 2010 AWS launches first region in Asia Pacific (Singapore)
  • 2010 Amazon SNS
  • May 2010 Multi Availability Zones for RDS
  • May 2010 Amazon S3 Reduced Redundancy Storage
  • 2010 AWS Import/Export
  • 2010 Amazon CloudFront adds HTTPS Support, lowers prices, Opens NYC edge location
  • 2010 Cluster Compute Instances for EC2
  • 2010 AWS Identity and Access Management
  • 2010 Oracle certifies enterprise software on AWS
  • 2010 New lower prices for High Memory Double and Quadruple XL instances\
  • 2010 Read Replicas, Lower High Memory DB Memory Instance Prices for Amazon RDS
  • 2010 Amazon S3 lowers storage prices
  • 2010 Amazon Route 53
  • 2010 Mobile SDKs for AWS

2011

  • 2011 Amazon SES
  • 2011 AWS New Premium Support Plans, Lowers usage prices by 50% on existing plans
  • 2011 AWS Elastic Beanstalk
  • 2011 AWS CloudFormation
  • 2011 AWS Tokyo Region
  • May 2011 SAP certifies enterprise software on AWS
  • May 2011 Amazon CloudWatch custom metrics, lower prices for Amazon EC2 monitoring
  • 2011 AWS new Data Transfer Pricing
  • Aug 2011 Amazon ElastiCache
  • Aug 2011 AWS enables enterprises to connect their data centers directly to AWS via AWS Direct Connect
  • Aug 2011 AWS launches Region dedicated to US Government Agencies and Contractors (AWS GovCloud)
  • 2011 AWS Route53 lowers pricing for hosted zones
  • 2011 AWS US West Region (Oregon) 100% Carbon Free Power
  • 2011AWS enters South America with region in Sao Paulo, Brazil
  • 2011 Amazon Elastic MapReduce support for cc2.8xlarge and reduced pricing for cc1.4xlarge

2012

  • 2012 AWS Storage Gateway
  • 2012 Dynamo DB
  • 2012 Amazon SWF
  • 2012 Amazon S3 lowers prices for standard storage
  • March 2012 New lower pricing for Amazon EC2, RDS and ElastiCache
  • April 2012 Amazon CloudSearch
  • 2012AWS Marketplace for third-party selling of applications to businesses
  • 2012 AWS Support Expands Free Tier, Adds Features, Lowers Prices
  • 2012 AWS Sydney Region
  • July 2012 EC2 High I/O Instances
  • 2012 Amazon Glacier
  • 2012 EBS Provisioned IOPs Announced
  • 2012 Second Gen Standard Instances for Amazon EC2 and a price reduction for M1 Instances
  • 2012 More than 6K attend first AWS user conference, re:Invent
  • 2012 AWS announces Amazon RedShift
  • 2012 Amazon CloudSearch free trial program and price reduction
  • 2012 Amazon RDS and Amazon ElastiCache Lower Prices
  • 2012 Amazon S3 Lower prices for Standard Storage and RRS
  • 2012 AWS Data Pipeline

2013

  • 2013 Amazon Elastic Transcoder
  • 2013 High Memory Cluster Instances
  • 2013 EC2 Price Reduction, global expansion of M3 Standard Instances, reduced data transfer pricing
  • 2013 AWS OpsWorks
  • 2013 IBM protest reveals that AWS won $600M cloud contract with CIA
  • 2013 Amazon RDS reduces price of Multi-AZ Deployments
  • 2013 Amazon SQS and SNS lower prices and expand free tiers – 50% price drop for SQS
  • 2013 AWS CloudHSM
  • 2013 AWS introduces global developer training and certification program
  • 2013 Lower prices on Amazon EC2 Reserved Instances, Amazon DB
  • 2013 AWS lowers prices for Amazon S3 request pricing, Windows on-demand EC2 instances by up to 26%
  • May 2013 AWS first major cloud provider to gain FedRAMP certification
  • 2013 AWS lowers prices of on-demand and reserved RDS instances by up to 28%
  • July 2013 AWS price reductions on EC2 dedicated instances
  • 2013 AWS Gartner estimates that AWS customers are deploying 5x more infrastructure on AWS than the combined adoption of the next 14 providers
  • 2013 Amazon AppStream launched
  • 2013 Amazon WorkSpaces launched
  • 2013 EC2 GPU Instances
  • 2013 price reduction for M3 Instances
  • 2013 – Amazon introduces Amazon Kinesis
  • 2013 Amazon EC2 HI1 Instance price reduction and Spot availability
  • 2013 Amazon China Region

2014

  • 2014 New Amazon EC2 M3 Instance Sizes and Lower Prices for Amazon S3 and Amazon EBS
  • 2014 AWS Storage Gateway price reduction
  • 2014 Amazon Redshift new SSD-based node type
  • 2014 General availability for Amazon AppStream and Amazon WorkSpaces
  • 2014 AWS price reduction EC2, RDS, S3, ElastiCache, and Elastic MapReduce (price reduction #42)
  • 2014 AWS receives Department of Defense-Wide provisional authorization for all U.S. Regions
  • 2014 Availability of R3 instances
  • May 2014 Launch of AWS Management Portal for vCenter
  • May 2014 Introducing Amazon EBS encryption
  • 2014 AWS availability of a new SSD-backed volume type for Amazon EBS (price drop #43)
  • 2014 AWS Opened Pop-up Loft in San Francisco on temporary basis
  • 2014 Amazon Redshift free trial and price reductions in Asia Pacific (price drop #44)
  • 2014 new low-cost general purpose instance type for Amazon EC2
  • 2014 Introduction of Amazon Zocalo (now known as Amazon WorkDocs)
  • 2014 Route 53 price reduction (price drop #45)
  • 2014 Introduction of services for mobile developers: Amazon Cognito, Amazon Mobile Analytics, AWS Mobile SDK, and Amazon SNS Mobile Push
  • 2014 Launched Amazon CloudWatch logs
  • 2014 AWS GovCloud achieves Department of Defense CSM Level 3-5 Provisional Authorization
  • 2014 General availability of Zocalo (now known as Amazon WorkDocs)
  • 2014 AWS EU (Frankfurt) region
  • 2014 AWS Reopened Pop-up Loft in San Francisco on permanent basis
  • 2014 Introduction of native support for document models like JSON into DynamoDB
  • 2014 Introduction of AWS Directory Service
  • 2014 AWS achieves ISO- 9001 certification
  • 2014 Expansion of APN Partner benefits, introduction of new Managed Service and SaaS Partner Programs, and expansion of APN Partner training
  • 2014 CloudSearch price drop (price drop #46)
  • 2014 Introduction of Amazon Aurora, a MySQL-compatible database
  • 2014 Enterprise security & governance services: Key Management, AWS Config, & AWS Service Catalog
  • 2014 New application lifecycle management services introduced: AWS CodeDeploy & AWS CodePipeline
  • 2014 Amazon EC2 Container Service introduced
  • 2014 AWS Lambda announced
  • 2014 Amazon EC2 C4 and EBS pre-announced
  • 2014 AWS pledges long-term commitment to achieve 100 percent renewable-energy usage
  • 2014 Data transfer and CloudFront price drop (price drop #47)

2015

  • 2015 Amazon Wind Farm Fowler Ridge Announced
  • 2015 Amazon WorkMail launches in preview
  • 2015 Amazon Machine Learning, fully managed service announced
  • 2015 AWS Marketplace for Desktop Apps and Amazon WorkSpaces Application Manager
  • 2015 ISVs Go “All-In” with AWS announcement: MicroStrategy, Software AG, TIBCO, and Onshape
  • May 2015 AWS Educate to Accelerate Cloud Learning in the Classroom
  • 2015 Amazon Solar Farm US East Announced
  • 2015 M4 Instances for Amazon EC2
  • 2015 AWS Opens Second Global “City on a Cloud Innovation Challenge”
  • 2015 AWS 2016 India region pre-announced
  • 2015 AWS Opened Pop-up Loft in New York City
  • 2015 ISVs Go “All-In” with AWS announcement: Looker, Qlik, Sumo Logic, and Works Applications.
  • 2015 AWS Announces Amazon API Gateway
  • 2015 AWS Announces AWS Device Farm
  • 2015 Amazon Wind Farm US East Announced
  • 2015 Amazon Aurora General Availability
  • 2015 AWS Announced Pop-up Lofts opening in London and Berlin
  • 2015 AWS Announced Amazon QuickSight at re:Invent
  • 2015 AWS Announced AWS Snowball and Amazon Kinesis Firehose at re:Invent
  • 2015 AWS Announced AWS Database Migration Service and Amazon RDS for MariaDB at re:Invent
  • 2015 AWS and Accenture Announce the Accenture AWS Business Group
  • 2015 AWS Announced AWS IoT preview at re:Invent
  • 2015 AWS Pre-Announced the AWS UK region to be third in the European Union
  • 2015 Amazon Wind Farm US Central Announced
  • 2015 AWS Announced IoT General Availability
  • 2015 AWS Introduced t2.nano, the smallest and lowest cost Amazon Ec2 instance

2016

  • 2016 AWS launched Korea region as fifth in Asia Pacific (Seoul)
  • 2016 Amazon WorkMail General Availability
  • 2015 AWS pre-announced Canada-Montreal region
  • 2016 AWS Announced Amazon Lumberyard and Amazon GameLift Availability for Game Developers
  • 2016 AWS Announced the AWS Pop-up Loft in Tel Aviv

 

 

マクドナルド(MCD) 企業分析

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デフレ・リセッション・景気後退・賃金下落といった話が出れば,cheap food銘柄であるマクドナルドは買いです。鉄壁のディフェンシブ銘柄の一つと呼んでいいマクドナルド(MCD)について分析します。

企業ホームページ

McDonald’s

セクター

一般消費財・サービス(レストラン)

企業状況

マクドナルド(MCD)は,外食産業で世界首位のハンバーガーチェーンです。1955年創業で,短時間で気軽に食事を楽しむファストフード文化を根付かせました。

店舗の数は199カ国で3万6525店に及びます。マックカフェやドライブスルー専門店なども運営しており,米国ではドライブスルーでの販売が過半数を占めます。チェーン全体での利用客数は1日あたり6900万人に上ります。

2014年12月31日時点
従来のフランチャイズ店 21,147
ライセンス契約店 5,529
海外のアフィリエイト店 3,405
フランチャイズ 30,081 (約8割)
直営店 6,444 (約2割)
マクドナルド全体 36,525

収益の柱は,直営店経営とフランチャイズによる収入です。(日本マクドナルドはロイヤルティ使用料として売上の3%を米国本社に納めています。)

近年は健康志向や競争の激化,新たな食文化が存在感を増し逆風です。フランチャイズの経営方針の見直しなどを行っています。2015年には直営店の数がわずかながら減り,フランチャイズ店舗数が伸びました。これは,米マクドナルドの直営によるリスクを低減させつつ,フランチャイズによるロイヤルティ料を集めるビジネスにより傾斜していくことを狙ったものだと考えられます。

実際,現在のフランチャイズ率80%を95%に引き上げようとしています。(“We continually review our mix of Company-owned and franchised restaurants to help optimize overall performance, with a goal to be 95% franchised over the long term. “直営店削減によるコスト減・投下資本減を狙ったもの。)米国本社は,グローバルなマクドナルド・フランチャイズのブランド管理会社に化けようとしているわけです。※その分,店舗数の増加ペースは落ちます。

海外売上比率は68.5%と非常に高く,ドル高の影響で売上は伸び悩んでいます。
米国31.5%,欧州40.4%,アジア太平洋中東アフリカ23.0%。

歴史

レイ・クロックとディック・クロックの兄弟により1955年に創業されました。ディックはもともと小さなハンバーガーレストランを経営していました。その後,紆余曲折は自伝(成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝―世界一、億万長者を生んだ男 マクドナルド創業者 (PRESIDENT BOOKS))を読んでいただくとして,1990年代以降のアップダウンをまとめます。

低迷の1990年代

マクドナルドは1990年代のジャック・グリーンバーグCEO時代に一度業績不振に陥りました。グリーンバーグが推し進めたのは「made for you」(あなたのために作ります)キャンペーンで,その結果調理時間が延び,マクドナルドの成長はマイナスに転じました。(ファストフードは速度が命なので,手間暇かけるサービスは逆効果でした。)

復活の2003年

ジャック・グリーンバーグは2003年に更迭され,ジム・カンタルポCEOに交代となりました。カンタルポは2003年から2004年の心臓発作による急逝までわずか1年程度の期間,CEOを勤めました。期間としては短かったですが,カンタルポはマクドナルドの業績回復に成功しました。カンタルポがやったのは,店舗の清掃・品質向上でした。グリーンバーグ時代の急激な出店ペースを改めて,出店数を絞り込むことで店舗間のカニバリズムを防ぎました。また,バーガーキングとの値下げ競争もやめました。

成長の2004-2012年

カンタルポCEOの死語,ジム・スキナーがCEOとなりました。スキナーはカンタルポと同じく既存店舗の改善に取り組みました。(スターバックス(SBUX)会長のハワード・シュルツと似ていますね。)

すでにマーケットリーダーとして確固たるブランドを築いているならば,特別な戦略というものは必要ないという典型的な例です。地道に既存店舗の価値向上・ブランド価値向上を推し進めていくのが最も重要だということでしょう。珈琲屋であるならコーヒーの香りのする快適な空間作りですし,ハンバーガー屋であるなら速やかに熱々のバーガーを提供するというごく基本的なことです。

ジム・スキナーCEOのもと,EPSは$1.93(2004年)から$5.36(2012年)へと大きく成長しました。

再度低迷の2012-2014年

2012年,スキナーが引退し,ドナルド・トンプソンがCEOとなりました。この時期,マクドナルドのサービス品質の低下,従業員のモチベーション低下(低賃金労働)などの問題が発生し,2014年のEPSは$4.82と,スキナーCEO時代よりも低下してしまいました。

復活の2015年

トンプソンCEOは更迭され,2015年3月にスティーブ・イースターブルックがCEOに就任しました。イースターブルックは直営店従業員の賃上げや,メニューのスリム化(サンドイッチなどの削減)などの改革を行いました。また,米国で人気の「オールデイ・ブレックファスト(いつでも朝食メニューを頼める)」を始めるなど,既存店価値の向上を目指しています。

まだ,就任して丸1年程度ですが,徐々に効果は出始めており,既存店売り上げが4%成長とトンプソンCEO時代の低迷から反転しつつあります。

収益構造

フランチャイズ売上の13%程度が本社の収益として入ってきています。フランチャイズ店舗はコストがかからずに儲かる家賃収入のようなものなので,フランチャイズ収益が増えていけばグロスマージンは改善していきます。

コストの欄を見ていただけばわかるとおり,本社にとってのフランチャイズはドル箱です。(直営店は売上の8割がコストで吹き飛ぶのに対し,フランチャイズ収益は8割が残ります。)

2,015 2,014 2,013 2,012 2,011 2,010
フランチャイズ売上 $ 66,226 69,617 70,251 69,687 67,648 61,147
直営店売り上げ $ 16,488 18,169 18,875 18,603 18,293 16,233
フランチャイズ収益
(本社への上納金)
$ 8,925 9,272 9,231 8,964 8,713 7,842
総売上 $ 25,413 27,441 28,106 27,567 27,006 24,075
直営店コスト $ 13,977 15,288
フランチャイズ店コスト $ 1,647 1,697  略  略
営業利益 $ 7,146 7,949 8,764 8,605 8,530 7,473
純利益 $ 4,529 4,758 5,586 5,465 5,503 4,946
フランチャイズ料比率 % 13.48% 13.32% 13.14% 12.86% 12.88% 12.82%

フランチャイズ比率推移

比率 2,015 2,014 2,013 2,012 2,011 2,010
直営店舗数 17.6% 6,444 6,714 6,738 6,598 6,435 6,399
フランチャイズ店舗数 82.4% 30,081 29,544 28,691 27,882 27,075 26,338
トータル店舗数 36,525 36,258 35,429 34,480 33,510 32,737

成長市場

外食産業の市場は年率3%程度で成長見込みです。

Global-food-services-sales-forecast-2013-2017

競合状況

マクドナルドの競合はケンタッキー・フライドチキンやピザ・ハットを運営するYUM!Brands(YUM),シェイクシャック(SHAK),チポトレ・メキシカン・グリル(CMG)などのファーストフード店です。

YUM!Brandsの売上は$13,820M程度でありマクドナルドの約半分です。業種もフライドチキンやピザなどこってりした油料理が中心であり,マクドナルドとは嗜好が異なります。おそらく直接は競合していません。

やはり直接的な競合となるのは,高級ハンバーガーチェーン店であるシェイクシャックでしょう。私は食べたことはないですが,東京の旗艦店では行列ができているという話を聞いたことがあります。一過性のブームではないということでしょう。

競争優位

マクドナルドの強みは圧倒的な知名度(ブランド力94点),規模の経済を生かした低コスト体質,そして日本を含む世界中からロイヤルティ料を回収する集金能力です。特に集金マシーンと化したフランチャイズ・システムを作り上げた元祖がマクドナルド(MCD)であり,このシステムがある限り経営が傾くことは考えられません。

広告宣伝費

2015年の広告宣伝費は$718.7M(売上$25,413Mの約3%)に上ります。コカコーラ(KO)の広告宣伝費が$3,976M(売上$44,294Mの約9%)と比べたらかわいいものですが,それでも,競合であるYum!などと比べれば群を抜いて宣伝にコストをかけています。

最近のマーケット状況

5年チャート

2015年のCEO交代による業績改善が評価され,株価は$80~$100のレンジ相場から上にブレイクアウトしました。

mcd-5yr-chart-20160401

日足チャート

mcd-daily-chart-20160401

先四半期のキャッシュフロー

先期は借入を増やしています。

直近株価評価

 

10年ファンダメンタル分析

10年ファンダメンタル レーダーチャート

マクドナルド(MCD)は極めて強固なブランド力を背景とした高収益企業であることがわかります。通常,外食産業や小売業といった業種は収益力に難ありというケースが多いのですが,フランチャイズからの集金マシーンと化したマクドナルドは違います。

残念ながらここ数年は成長力が低迷していましたが,2015年以降の復活劇が本物であれば株としても魅力あるものになってくると思います。

10年ファンダメンタル 得点表

5年平均 5年スコア 10年平均 10年スコア 配点
配当株総合評価 312 367 500
グロース株総合評価 非該当 非該当 非該当
グロスマージン(粗利率) 38.8% 32 38.6% 32 32
営業キャッシュフローマージン 25.3% 21 25.3% 21 28
株主資本利益率(ROE)平均値(Net Income/Equity) 36.8% 20 33.9% 20 20
有機的成長率(ROE x 内部留保率) 15.8% 6 16.5% 6 12
無機的成長率(BPS成長率) -6.8% 0 -3.4% 0 8
収益力評価 79 79 100
営業キャッシュフロー増加率 -1.8% 0 4.2% 10 40
フリーキャッシュフロー増加率 1.3% 8 6.2% 24 32
EPS増加率 -1.9% 0 5.4% 21 28
成長力評価 8 55 100
自己資本比率平均値 43.2% 30 44.7% 30 40
流動比率(流動資産/流動負債) 152.2% 30 141.6% 20 40
クレジット格付け 14 15 14 15 20
財務健全性評価 75 65 100
平均配当利回り 3.5% 28 3.6% 28 28
自社株買い利回り 2.0% 8 2.8% 12 16
配当金増加率 6.3% 14 13.2% 28 28
配当性向(増配余地) 55.6% 0 53.6% 0 28
株主還元評価 50 68 100
ブランド力 94 60 94 60 60
エコノミック・モート Wide 40 Wide 40 40
定性的評価 100 100 100
機関投資家比率 69.0% 4 69.0% 4 8
機関投資家の売買動向 -5.6% 2 -5.6% 2 8
インサイダーの売買動向 -5.3% 4 -5.3% 4 8
現在の株価 240.2% 0 240.2% 0 12
現在のPER(Forward) 21.06 4 21.06 4 16
現在の配当利回り 2.8% 12 2.8% 12 16
(配当+自社株買い)利回り 5.9% 12 6.7% 16 16
疑似債権成長率 18.8% 4 18.8% 4 16
直近株価評価 42 46 100

10年分析グラフ

デフレをものともせず2006年〜2011年まで成長を続けてきました。ここ数年はやや伸び悩んでいますが,高収益体質は維持しています。PERは高めで推移しており,ここから買いに行って報われるかどうかは注意が必要です。

mcd-10yr-analysis

優良銘柄の条件

優良銘柄の条件 結果 判定 備考
条件3:他社と差別化できる優れた新製品を持つ  特になし。 ×
条件5:主力製品の市場が長期的に拡大し続ける余地がある  人口増に合わせて成長余地あり
条件10:売上,営業キャッシュフロー,フリーキャッシュフロー,EPSのバランスがよい 極めて美しいです。外食とは思えないバランスの良さです。

フランチャイズ・ビジネスモデル

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マクドナルド(MCD)ではフランチャイズが8割を占めており,フランチャイズからのロイヤルティ料が業績の核を担っています。では,具体的にはフランチャイズとはどのようなビジネスモデルなのでしょうか?

フランチャイズ

フランチャイズ(Franchise)の語源はフランス語のfranc(英語のfree)から来ています。基本的には本社(franchisor)とフランチャイズオーナー(franchisee)が費用を折半して投資を行います。よくあるのは,本社が不動産を負担し,その他の内装などの費用はフランチャイズオーナー側が負担するというような形態です。こうすることで,フランチャイズオーナー側の初期投資の費用が減らせるとともに,本社は従業員を直接雇用せずにすむので固定費用を減らせます。

この双方にとってのリスク低減効果がフランチャイズの最大のメリットです。

本社の蓄えたビジネスノウハウや商品を各フランチャイズに提供する代わりに,そのブランド使用料やノウハウ料として売上の数パーセント(平均すると6.7%程度。さらにマーケティングフィーとして2%程度も追加されるためトータル8.7%程度となる)をロイヤルティとして徴収することで本社は儲けます。

本社とフランチャイズオーナーのメリット

本社からすると,人件費などの固定費を抱えずにすむことから,資本投下をあまりせずにすむというわけで損益分岐点を下げることができるメリットがあります。またフランチャイズオーナーからすると,各種料金は支払わなければならないものの強力なブランドとノウハウを手に入れることができるので,一から自分の店を経営するよりもビジネスの失敗リスクを下げることができます。また,広告宣伝なども一店舗だけでTV CMを出すことは不可能ですが,フランチャイズなら本社がスーパーボウルやオリンピックの合間に宣伝してくれます。こうした宣伝などの費用も広くフランチャイズ店舗で負担することで規模の経済を生かすことができるのがメリットです。

本社 投資の削減。固定費の削減。
フランチャイズオーナー ノウハウ不足による失敗リスクの低減。広告宣伝効果の享受。

フランチャイズの歴史

フランチャイズは1950年代から1960年代にかけて爆発的に普及しました。マクドナルド(MCD)やケンタッキーフライドチキン(YUM)やピザハット(YUM)が全米に広がったのもこの時期です。1950年代の10年間で各社とも500店舗~1000店舗出店し拡大しました。

しかし,1960年代になってくると本社が各フランチャイズ店舗をサポートするというよりも,商品の押し売りに近いことをするようになり,一歩間違えばアムウェイのような単なるネズミ講に近いことがまかり通るようになりました。この時期,フランチャイズを規制する法案が各州で作られるようになります。また,フランチャイズの経営内容を公開するディスクロージャーが義務づけられるなど,徐々に現在のフランチャイズの形が社会的にも法的にも作られていきます。

1970年代にいったん下火となったフランチャイズも,1980年代,90年代になってくると再び人気となり店舗数も増加しました。現在では,フランチャイズビジネスは全米の小売店売り上げの40%を占めるまでになっています。また,フランチャイズ経営を行う企業は7500社におよび総売上でいうと100兆円規模となっています。雇用面ではフランチャイズは1800万人の従業員を雇用しています。

マクドナルド(MCD)の場合

実際にフランチャイズの具体例を見てみましょう。

全世界に3万店舗のフランチャイズ店を持つマクドナルドは直営店比率を5%(フランチャイズ比率を95%)にしようとしています。その狙いとしては,直営店は本社従業員の教育や,新サービスのモデル店舗として必要な分のみを残したというのが近いでしょう。モデル店舗では新メニューや新しいマーケティングコンセプト,価格戦略を試すなどの実験を行ってノウハウを蓄積し,そのノウハウをフランチャイズ店舗に提供することでグループ全体の売上を拡大します。そして,フランチャイズ店からのロイヤルティ収益は売上に比例するので,収益の柱はあくまでフランチャイズの売上ということになります。

これがフランチャイズの最新のビジネスモデルなのかどうかは判断できませんが,参考になる事例だと思います。

フランチャイズ契約

ジュライの契約では本社がフランチャイズ店舗の土地と建物を所有します。そしてフランチャイズオーナーに長期リースという形で貸し付けます。また,設備や内装を本社から購入またはリースすることになります。マクドナルドは一等地を保有していることが多いので,テナント用不動産の大家業を営んでいるのに等しく,また飲食店設備のリース販売もやっていることになります。日本の企業で言うなら,三菱地所(不動産)とオリックス(リース)が合体したようなものでしょう。

フランチャイズ契約の期間は一般的には20年間です。

フランチャイズオーナーが支払う必要があるのは,固定額(不動産などのリース料,ブランド料)に加えて,売上比例額=ロイヤルティです。言ってみれば,本社からすればフランチャイズ店舗が赤字でも固定額を回収できれば赤字にはなりません。ワーストケースでも安全にビジネスをできるというメリットがあります。

フランチャイズ店舗が本社から購入するもの

本社はフランチャイズ店舗に食材や設備や宣伝商材などを販売します。本社の強力な購買能力を利用して,食材や商品を安く仕入れることができるので,各フランチャイズ店舗が自前で材料を購入するよりも安上がりになり利益マージン確保につながります。(規模の経済)これがマイナスに働くと安かろう悪かろうの中国肉などが紛れ込んでしまいますが・・・。

フランチャイズ・ランキング

Franchise Times誌のフランチャイズ・トップ200(といいつつ500銘柄ありますが)をまとめました。

評価基準はフランチャイズ売上とフランチャイズ店舗数をベースにしたもののようです。見ていただくとわかりますが,基本的に上位はレストランチェーン店が独占しており,ホテルチェーンがその後に続いていますね。その他,セブンイレブンのような小売りやレンタカーなどの業種もあります。

Rank Category Company System Sales U.S. Locations Total Locations
1 McDonald’s Restaurant $87,786,000,000 14,344 36,258
2 7-Eleven Retail $84,500,000,000 7,836 55,801
3 KFC Restaurant $23,400,000,000 4,391 19,420
4 Subway Restaurant $18,200,000,000 26,958 43,154
5 Burger King Restaurant $17,017,100,000 7,126 14,372
6 Ace Hardware Retail $14,299,000,000 4,251 4,794
7 Hertz Automotive $14,200,000,000 5,760 11,230
8 Pizza Hut Restaurant $12,200,000,000 7,908 15,605
9 Marriott Hotels & Resorts Hotel/Travel $9,600,000,000 347 578
10 Wendy’s Restaurant $9,300,000,000 5,750 6,515
11 RE/MAX Real Estate $9,115,777,633 3,473 6,772
12 Dominos Restaurant $8,900,000,000 5,067 11,629
13 Hilton Hotels & Resorts Hotel/Travel $8,900,000,000 239 560
14 Taco Bell Restaurant $8,500,000,000 5,950 6,198
15 Dunkin’ Donuts Restaurant $7,877,000,000 8,082 11,310
16 Circle K Retail $7,037,610,510 3,766 8,456
17 Hyatt Hotel/Travel $6,900,000,000 420 554
18 Tim Hortons Restaurant $6,611,000,000 873 4,671
19 Chick-Fil-A Restaurant $6,000,000,000 1,885 1,885
20 Holiday Inn Hotels & Resorts Hotel/Travel $5,950,000,000 770 1,212
21 Holiday Inn Express Hotel/Travel $5,750,000,000 2,060 2,365
22 Sheraton Hotel/Travel $5,650,000,000 232 438
23 Hampton Inn & Suites Hotel/Travel $5,500,000,000 1,906 2,005
24 Keller Williams Realty Real Estate $4,891,943,944 700 771
25 Courtyard Hotel/Travel $4,700,000,000 861 988
26 Applebee’s Restaurant $4,575,000,000 1,870 2,017
27 Panera Bread Restaurant $4,512,125,000 1,865 1,880
28 Dairy Queen Restaurant $4,100,000,000 4,517 6,601
29 Chili’s Restaurant $4,060,900,000 1,262 1,569
30 Sonic, America’s Drive-In Restaurant $4,060,000,000 3,518 3,518
31 Comfort Inn & Suites Hotel/Travel $3,900,000,000 1,817 2,350
32 Westin Hotel/Travel $3,650,000,000 132 201
33 Radisson Hotels Hotel/Travel $3,375,000,000 90 440
34 GNC Retail $3,325,000,000 4,369 6,707
35 Papa John’s Restaurant $3,319,000,000 3,340 4,663
36 Arby’s Restaurant $3,300,000,000 3,226 3,357
37 Doubletree by Hilton Hotel/Travel $3,300,000,000 292 410
38 Buffalo Wild Wings Restaurant $3,278,000,000 1,052 1,071
39 H&R Block Personal Services $3,275,000,000 10,378 11,966
40 Crowne Plaza Hotels & Resorts Hotel/Travel $3,250,000,000 181 406
41 Jack In The Box Restaurant $3,179,807,000 2,247 2,248
42 Aaron’s Retail $3,166,000,000 2,058 2,109
43 InterContinental Hotels & Resorts Hotel/Travel $3,050,000,000 50 180
44 IHOP Restaurant Restaurant $3,010,000,000 1,579 1,650
45 Residence Inn Hotel/Travel $3,000,000,000 648 675
46 Express Employment Professionals Business Services $2,850,000,000 682 732
47 Popeyes Louisiana Kitchen Restaurant $2,740,000,000 1,870 2,379
48 T.G.I. Friday’s Restaurant $2,700,000,000 499 916
49 Denny’s Restaurant $2,600,000,000 1,596 1,702
50 Hilton Garden Inn Hotel/Travel $2,600,000,000 546 618
51 Little Caesars Restaurant $2,550,000,000 4,109 4,503
52 Hardee’s Restaurant $2,413,727,000 1,777 2,077
53 Renaissance Hotel/Travel $2,250,000,000 76 157
54 Quality Inn & Suites Hotel/Travel $2,125,000,000 1,284 1,641
55 ServiceMaster Clean Cleaning Services $2,105,000,000 3,105 4,991
56 Disaster Kleenup International Cleaning Services $2,100,000,000 540 599
57 The UPS Store Printing/Shipping $2,055,000,000 4,502 4,856
58 Embassy Suites Hotel/Travel $1,975,000,000 211 219
59 Baskin Robbins Restaurant $1,896,000,000 2,484 7,552
60 Carl’s Jr. Restaurant $1,840,886,000 1,150 1,479
61 Ramada Hotel/Travel $1,825,000,000 414 837
62 Whataburger Restaurant $1,801,070,000 774 774
63 Days Inn Hotel/Travel $1,775,000,000 1,544 1,794
64 Jimmy John’s Restaurant $1,756,713,820 2,109 2,109
65 Golden Corral Restaurant $1,735,000,000 500 500
66 Fairfield Inn Hotel/Travel $1,700,000,000 704 721
67 SERVPRO Cleaning Services $1,664,907,422 1,680 1,691
68 Super 8 Hotel/Travel $1,650,000,000 1,689 2,510
69 Berkshire Hathaway HomeServices Real Estate $1,610,001,468 1,013 1,013
70 La Quinta Inn & Suites Hotel/Travel $1,600,000,000 859 867
71 Midas Automotive $1,540,000,000 1,136 2,122
72 Jiffy Lube Automotive $1,530,446,873 1,929 2,082
73 Snap-on Tools Retail $1,433,824,092 3,422 4,751
74 Red Robin Restaurant $1,430,000,000 496 514
75 Five Guys Restaurant $1,316,000,000 1,163 1,241
76 Homewood Suites Hotel/Travel $1,275,000,000 342 359
77 Zaxby’s Restaurant $1,257,666,032 659 659
78 Church’s Chicken Restaurant $1,236,991,336 1,168 1,642
79 Massage Envy Personal Services $1,220,000,000 1,068 1,068
80 Planet Fitness Personal Services $1,200,000,000 917 918
81 Home Instead Senior Care Health/Medical $1,170,000,000 609 1,020
82 Krispy Kreme Restaurant $1,135,957,000 278 987
83 ampm Retail $1,135,000,000 972 972
84 Great Clips Personal Services $1,114,736,376 3,565 3,690
85 Springhill Suites Hotel/Travel $1,100,000,000 314 316
86 Culver’s Frozen Custard & Butterburgers Restaurant $1,035,687,641 528 528
87 Bojangles’ Famous Chicken n Biscuits Restaurant $1,035,373,437 619 622
88 Interim HealthCare Health/Medical $1,001,500,000 342 556
89 Bostons Restaurant & Sports Bar Restaurant $1,000,000,000 28 410
90 Wyndham Hotels & Resorts Hotel/Travel $1,000,000,000 109 195
91 Anytime Fitness Personal Services $966,973,000 1,987 2,736
92 Hooters Restaurant $963,791,283 338 415
93 Steak n Shake Restaurant $935,000,000 541 545
94 J.D. Byrider Automotive $898,000,000 166 166
95 Four Points Hotel/Travel $875,000,000 134 195
96 Papa Murphy’s Restaurant $849,682,000 1,461 1,461
97 Roto-Rooter Home Services $842,939,136 502 534
98 Country Inn & Suites Hotel/Travel $800,000,000 439 472
99 Prudential Real Estate Real Estate $774,357,642 230 230
100 G.J.Gardner Homes Real Estate $762,453,841 32 127
101 Checkers/Rally’s Restaurant $756,100,000 801 802
102 Pet Supplies Plus Retail $750,000,000 331 331
103 El Pollo Loco Restaurant $723,000,000 415 415
104 Jani-King Cleaning Services $716,300,000 7,020 9,524
105 SuperCuts Personal Services $715,337,337 2,372 2,638
106 CARSTAR Automotive $712,000,000 231 441
107 Clarion Hotels Hotel/Travel $710,000,000 178 316
108 Valvoline Instant Oil Change Automotive $702,385,054 930 930
109 Staybridge Suites Hotel/Travel $700,000,000 197 205
110 Big O Tires Automotive $693,176,000 381 381
111 Wingstop Restaurant $679,000,000 671 712
112 Eye Level Learning Centers Personal Services $677,071,462 230 1,263
113 Perkins Restaurant Restaurant $676,000,000 390 407
114 Qdoba Mexican Grill Restaurant $669,396,000 640 644
115 Del Taco Restaurant $656,105,288 547 547
116 Paul Davis Restoration Cleaning Services $651,731,000 200 263
117 Ruth’s Chris Steak House Restaurant $625,000,000 123 143
118 Jason’s Deli Restaurant $617,200,000 253 253
119 Linc Service Home Services $608,364,115 136 171
120 Econo Lodge Hotel/Travel $600,000,000 856 942
121 Towneplace Suites Hotel/Travel $600,000,000 240 244
122 Auntie Anne’s Restaurant $593,734,000 1,089 1,568
123 The Goddard School Personal Services $578,045,005 446 446
124 Moe’s Southwest Grill Restaurant $571,313,778 581 585
125 Long John Silver’s Restaurant $555,000,000 1,152 1,173
126 Firehouse Subs Restaurant $552,407,278 839 849
127 Jersey Mike’s Subs Restaurant $525,000,000 857 857
128 Howard Johnson Hotel/Travel $525,000,000 281 429
129 Meineke Car Care Centers Automotive $520,000,000 885 979
130 Snap Fitness Personal Services $514,000,000 1,064 1,439
131 Primrose Schools Personal Services $509,120,439 291 291
132 Edible Arrangements Retail $508,000,000 1,060 1,163
133 Visiting Angels Health/Medical $506,000,000 483 483
134 McAlister’s Deli Restaurant $503,960,275 337 337
135 Captain D’s Restaurant $501,670,000 515 515
136 Jackson Hewitt Tax Service Personal Services $501,000,000 6,341 6,341
137 Famous Dave’s Restaurant $500,886,000 188 189
138 Quiznos Restaurant $500,000,000 1,000 1,650
139 Jamba Juice Restaurant $500,000,000 806 868
140 Einstein Bros. Bagels Restaurant $500,000,000 758 758
141 Berlitz Personal Services $497,933,173 36 434
142 ProForma Printing/Shipping $497,900,000 700 752
143 Batteries Plus Retail $490,483,948 650 650
144 Minuteman Press Printing/Shipping $490,000,000 690 935
145 Sleep Inn & Suites Hotel/Travel $490,000,000 371 381
146 Wireless Zone Retail $480,000,000 382 382
147 Red Roof Inn Hotel/Travel $475,000,000 397 397
148 MAACO Automotive $468,000,000 454 472
149 Noodles & Company Restaurant $465,140,000 439 439
150 Stanley Steemer Cleaning Services $458,175,608 274 274
151 Cold Stone Creamery Restaurant $451,835,413 945 1,243
152 Comfort Keepers Health/Medical $449,000,000 707 806
153 CiCi’s Pizza Restaurant $441,634,025 452 452
154 AAMCO Automotive $438,700,000 661 671
155 Liberty Tax Service Personal Services $434,961,000 4,069 4,328
156 Sport Clips Personal Services $427,000,000 1,347 1,368
157 Round Table Pizza Restaurant $420,000,000 437 446
158 The HoneyBaked Ham Co. Retail $420,000,000 388 388
159 Unishippers Printing/Shipping $420,000,000 314 314
160 Slumberland Retail $418,000,000 123 123
161 Matco Tools Retail $413,042,000 1,552 1,616
162 SIGNARAMA Printing/Shipping $412,603,076 534 961
163 Plato’s Closet Retail $407,000,000 412 426
164 Krystal Company Restaurant $404,386,000 353 353
165 Travelodge Hotel/Travel $400,000,000 331 421
166 FASTSIGNS Printing/Shipping $388,000,000 510 575
167 On The Border Restaurant $383,000,000 144 154
168 Pollo Campero Restaurant $379,151,722 56 338
169 Keystone Insurers Group Business Services $378,800,313 271 271
170 Fantastic Sams Hair Salons Personal Services $376,902,240 1,134 1,138
171 Coverall Health-Based Cleaning System Cleaning Services $376,000,000 7,538 7,996
172 Two Men and A Truck Personal Services $369,058,661 237 262
173 Friendlys Restaurants Restaurant $365,645,682 282 282
174 One Hour Heating & Air Conditioning Home Services $357,520,671 302 307
175 Corner Bakery Cafe Restaurant $355,765,033 180 180
176 Wienerschnitzel Restaurant $350,000,000 335 337
177 Taco John’s Restaurant $348,000,000 393 393
178 Village Inn Restaurant $348,000,000 210 210
179 Real Living Real Estate Real Estate $347,038,451 268 268
180 Marco’s Pizza Restaurant $345,665,666 570 572
181 Chem-Dry Cleaning Services $345,000,000 2,096 3,509
182 Valpak Business Services $343,431,000 153 157
183 Johnny Rockets Restaurant $343,420,000 215 316
184 Travel Leaders Hotel/Travel $341,250,000 370 373
185 Mr. Rooter Home Services $330,000,000 206 324
186 Hungry Howie’s Pizza Restaurant $327,126,468 551 551
187 Yogen Fruz Restaurant $326,000,000 178 1,012
188 Spherion Business Services $325,849,628 157 157
189 Microtel Inn & Suites Hotel/Travel $325,000,000 299 323
190 A&W Restaurants Restaurant $321,929,544 646 947
191 Charley’s Grilled Subs Restaurant $321,732,000 445 534
192 Dickey’s Barbecue Pit Restaurant $318,750,000 484 484
193 CertaPro Painters Personal Services $313,902,482 423 451
194 Results! Travel Hotel/Travel $312,500,000 656 656
195 Right at Home Health/Medical $310,220,762 407 466
196 Pollo Tropical Restaurant $308,500,000 129 161
197 Budget Blinds Retail $327,000,000 • 863 964
198 Cinnabon Restaurant $304,223,000 675 1,246
199 Schlotzsky’s Bakery Cafe Restaurant $301,975,463 347 353
200 JAN-PRO Cleaning Services $300,000,000 6,700 8,097
201 American Family Care Health/Medical $298,120,057 146 146
202 AlphaGraphics Printing/Shipping $296,360,000 242 274
203 Baymont Inn & Suites Hotel/Travel $296,000,000 369 369
204 UNO Chicago Grill Restaurant $296,000,000 125 140
205 MRINetwork Business Services $294,800,000 549 627
206 Sir Speedy Print Signs Marketing Printing/Shipping $291,300,000 203 313
207 Labor Finders Business Services $290,850,000 182 182
208 BrightStar Care Health/Medical $290,150,203 290 290
209 Once Upon A Child Retail $275,000,000 272 308
210 PostNet Printing/Shipping $272,000,000 261 673
211 Smashburger Restaurant $272,000,000 296 312
212 Sizzler Restaurant $272,000,000 140 140
213 Rainbow International Restoration Cleaning Services $270,000,000 294 405
214 Smoothie King Restaurant $266,800,948 590 708
215 Fuddruckers Restaurant $263,000,000 169 180
216 Sonny’s BBQ Restaurant $258,273,147 115 115
217 Chesters Restaurant $256,246,790 1,029 1,279
218 Tuffy Tire & Auto Service Automotive $253,476,404 205 205
219 Peter Piper Pizza Restaurant $244,489,221 94 142
220 Huddle House Restaurants Restaurant $240,000,000 368 368
221 Family Financial Centers Personal Services $240,000,000 42 42
222 Old Chicago Pizza & Taproom Restaurant $235,416,000 100 100
223 1-800-Radiator Retail $235,267,612 202 210
224 Allegra Marketing-Print-Mail Printing/Shipping $234,644,379 255 276
225 TEGG Service Home Services $234,101,666 79 116
226 Play It Again Sports Retail $227,000,000 265 301
227 Twin Peaks Restaurant $226,875,699 63 64
228 Bar Louie Restaurant $225,000,000 90 90
229 Fazoli’s Restaurant $222,929,596 212 212
230 Senior Helpers Health/Medical $220,000,000 260 271
231 Pita Pit Restaurant $218,750,000 227 543
232 WoodSpring Suites Hotel/Travel $215,000,000 196 196
233 Houlihan’s Restaurant $213,600,000 76 76
234 Beef O Brady’s Restaurant $212,000,000 201 202
235 Pizza Ranch Restaurant $211,475,000 188 188
236 The Melting Pot Restaurant $210,928,984 129 133
237 Tropical Smoothie Cafe Restaurant $209,065,033 411 411
238 Molly Maid Cleaning Services $208,000,000 466 642
239 Sylvan Learning Personal Services $207,847,946 565 659
240 Menchie’s Frozen Yogurt Restaurant $207,000,000 336 472
241 Bruegger’s Bagels Restaurant $207,000,000 285 289
242 CruiseOne Hotel/Travel $203,000,000 987 990
243 Freddy’s Frozen Custard & Steakburgers Restaurant $200,073,733 135 135
244 Rosati’s Pizza Restaurant $198,000,000 124 124
245 Express Oil Change Automotive $197,682,644 210 210
246 Closets By Design Personal Services $190,000,000 42 48
247 Tilted Kilt Pub and Eatery Restaurant $189,818,648 91 99
248 The Cleaning Authority Cleaning Services $185,000,000 175 182
249 Sky Zone Personal Services $184,000,000 94 104
250 Benjamin Franklin Plumbing Home Services $183,197,448 270 271
251 Ziebart Automotive $180,000,000 112 413
252 Yogurtland Restaurant $173,021,403 262 297
253 Cost Cutters Personal Services $170,543,132 681 681
254 Interstate All Battery Center Retail $169,074,020 199 208
255 Penn Station East Coast Subs Restaurant $168,989,814 287 287
256 Precision Tune Auto Care Automotive $165,554,867 253 316
257 @WORK Group Business Services $164,569,299 74 74
258 Which Wich? Superior Sandwiches Restaurant $163,332,074 322 331
259 U.S. Lawns Business Services $163,000,000 264 264
260 AIA Corporation Business Services $162,000,000 285 285
261 Quaker Steak & Lube Restaurant $160,333,000 58 58
262 1-800-GOT-JUNK? Personal Services $158,000,000 131 154
263 Image360 Printing/Shipping $158,000,000 306 316
264 Granite Transformations Retail $157,666,310 75 139
265 Vanguard Cleaning Systems Cleaning Services $157,000,000 2,794 3,109
266 Christian Brothers Automotive Automotive $154,111,922 135 135
267 Black Bear Diner Restaurant $152,500,000 67 67
268 Fleet Feet Sports Retail $152,000,000 139 139
269 Novus Glass Automotive $150,000,000 302 2,112
270 Togo’s Sandwiches Restaurant $147,403,000 250 250
271 The Learning Experience Personal Services $145,653,944 148 148
272 Villa Italian Kitchen Restaurant $145,505,243 235 273
273 The Maids Cleaning Services $143,902,000 1,133 1,165
274 Weed Man Home Services $143,219,156 425 563
275 Newks Eatery Restaurant $141,620,154 80 80
276 Wild Birds Unlimited Retail $139,915,668 269 287
277 Grease Monkey Automotive $139,176,582 197 262
278 Precision Door Service Home Services $136,497,443 78 78
279 Golden Chick Restaurant $135,000,000 150 150
280 Glass Doctor Automotive $134,100,000 170 178
281 ComForCare Home Care Health/Medical $134,000,000 200 204
282 Kiddie Academy Personal Services $133,300,000 131 131
283 LaRosas Restaurant $133,251,531 65 65
284 Shakey’s Pizza Parlor Restaurant $133,000,000 54 222
285 Godfather’s Pizza Restaurant $132,000,000 571 571
286 Fox’s Pizza Den Restaurant $131,250,000 250 250
287 Hand & Stone Massage and Facial Spa Personal Services $130,000,000 150 161
288 Wetzels Pretzels Restaurant $125,000,000 261 299
289 Retrofitness Personal Services $124,000,000 126 126
290 Alamo Drafthouse Cinema Restaurant $123,521,212 19 19
291 Home Helpers Health/Medical $123,000,000 330 331
292 Taco Time Restaurant $121,377,936 150 278
293 Great American Cookies Restaurant $120,000,000 323 345
294 Sandler Training Business Services $120,000,000 181 253
295 Aire Serv Cleaning Services $118,300,000 168 186
296 Fatburger Restaurant $117,727,952 76 152
297 Genghis Grill Restaurant $117,277,663 88 88
298 Rita’s Italian Ice Restaurant $115,000,000 592 594
299 Steamatic Cleaning Services $112,853,616 346 392
300 City Wide Business Services $112,174,347 42 42
301 Pizza Inn Restaurant $111,000,000 181 252
302 Giordanos Famous Stuffed Pizza Restaurant $110,000,000 52 52
303 Homewatch Caregivers Health/Medical $109,762,154 216 230
304 COIT Cleaning Services $107,000,000 46 46
305 Sirloin Stockade Restaurant $105,731,318 25 52
306 Certified Restoration Drycleaning Network Cleaning Services $105,210,946 136 156
307 The Little Gym Personal Services $102,200,000 196 286
308 Great Harvest Bread Co. Restaurant $102,111,047 204 204
309 Lawn Doctor Home Services $100,000,000 486 486
310 The Greene Turtle Sports Bar & Grille Restaurant $100,000,000 37 37
311 Nathan’s Famous Restaurant $99,085,445 235 294
312 InXpress Printing/Shipping $99,000,000 80 255
313 Carvel Ice Cream Restaurant $98,300,000 378 425
314 Home Care Assistance Health/Medical $98,000,000 102 109
315 Fuzzys Taco Shop Restaurant $97,980,000 79 79
316 Jazzercise Personal Services $97,705,000 6,879 8,604
317 Link Staffing Services Business Services $96,257,880 42 42
318 Pronto Insurance Business Services $95,800,000 123 123
319 Relax The Back Retail $95,000,000 90 91
320 Sterling Optical/Site for Sore Eyes Personal Services $93,523,550 126 126
321 SYNERGY HomeCare Health/Medical $93,357,115 302 302
322 Mathnasium Learning Centers Personal Services $93,300,000 520 538
323 Marble Slab Creamery Restaurant $88,000,000 220 349
324 PuroClean Cleaning Services $87,944,474 200 230
325 Rooter-Man Home Services $87,450,000 469 514
326 HuHot Mongolian Grill Restaurant $87,423,875 54 54
327 Real Property Management Real Estate $87,400,000 256 264
328 Always Best Care Senior Services Health/Medical $87,077,608 197 198
329 The Flame Broiler The Rice Bowl King Restaurant $85,647,258 160 160
330 Hurricane Grill & Wings Restaurant $84,151,667 65 65
331 Blimpie Subs & Salads Restaurant $84,028,636 471 480
332 Buffalo Wings & Rings Restaurant $84,000,000 45 62
333 Comet Cleaners Cleaning Services $83,736,000 195 204
334 Complete Nutrition Retail $82,807,603 162 162
335 Runza Restaurant $82,000,000 80 80
336 Nothing Bundt Cakes Retail $81,792,429 113 113
337 PIP Print Signs Marketing Printing/Shipping $81,564,000 79 84
338 Camp Bow Wow Personal Services $80,978,369 125 126
339 Elements Massage Personal Services $79,850,648 195 195
340 Massage Heights Personal Services $76,000,000 120 126
341 CleanNet USA Cleaning Services $75,269,427 2,626 2,626
342 Saladworks Restaurant $75,000,000 107 111
343 Roy Rogers Restaurant $74,042,154 49 49
344 Expedia Cruise Ship Centers Hotel/Travel $73,500,000 41 185
345 Capriotti’s Sandwich Shop Restaurant $72,794,669 103 103
346 Maid Brigade Cleaning Services $72,000,000 403 483
347 MaidPro Cleaning Services $72,000,000 182 188
348 REPOWER by Solar Universe Business Services $72,000,000 39 39
349 GolfTEC Personal Services $70,588,000 172 188
350 Clothes Mentor Retail $70,304,765 124 124
351 Baby Boot Camp Personal Services $70,200,000 119 120
352 Costa Vida Restaurant $70,112,037 65 68
353 Colton’s Steak House & Grill Restaurant $67,600,000 31 31
354 Mr. Electric Home Services $66,000,000 125 169
355 BlueGrace Logistics Business Services $66,000,000 57 57
356 BURGERFI Restaurant $65,000,000 68 68
357 ABC Seamless Home Services $64,860,000 104 104
358 Mr. Handyman Home Services $64,300,000 195 206
359 YESCO Printing/Shipping $64,100,000 106 135
360 Kneaders Bakery & Cafe Restaurant $63,331,354 36 36
361 Pro Image Sports Retail $63,000,000 120 121
362 Mister Sparky Home Services $62,521,199 105 106
363 Wayback Burgers Restaurant $60,000,000 97 98
364 Bruster’s Real Ice Cream Restaurant $59,285,073 187 188
365 Cousins Subs Restaurant $59,100,000 118 118
366 Kona Ice Restaurant $58,344,173 612 615
367 Fish Window Cleaning Cleaning Services $57,387,054 257 257
368 Craters & Freighters Printing/Shipping $55,131,189 64 64
369 bd’s Mongolian Grill Restaurant $54,394,239 28 29
370 Mr. Appliance Home Services $54,000,000 185 189
371 Bartercard Business Services $53,700,000 6 81
372 The Grounds Guys Personal Services $53,000,000 179 222
373 UFC Gym Personal Services $52,900,000 120 121
374 Port of Subs Restaurant $51,895,569 136 136
375 Salsarita’s Fresh Cantina Restaurant $50,772,074 93 93
376 Stratus Building Solutions Cleaning Services $50,400,000 1,200 1,200
377 Pak Mail Printing/Shipping $50,000,000 228 377
378 Philly Pretzel Factory Restaurant $50,000,000 153 153
379 Pizza Factory Restaurant $49,000,000 111 111
380 Red Hot & Blue Restaurant $49,000,000 22 22
381 Toppers Pizza Restaurant $48,750,000 66 66
382 CPR Cell Phone Repair Personal Services $48,000,000 203 220
383 Miracle Method Surface Refinishing Home Services $48,000,000 133 137
384 Floor Coverings International Home Services $47,407,529 105 116
385 Kid to Kid Retail $47,354,069 89 109
386 Ground Round Grill & Bar Restaurant $47,231,575 27 27
387 Apricot Lane Boutique Retail $47,000,000 74 74
388 Signal 88 Business Services $46,949,143 344 346
389 TITLE Boxing Club Personal Services $46,213,645 141 142
390 The Joint – the chiropratic place Health/Medical $46,000,000 246 246
391 Country Kitchen Restaurant $45,667,814 44 45
392 Mr. Transmission Automotive $45,559,279 127 127
393 Spring-Green Lawn Care Home Services $45,500,000 130 130
394 Speedpro Imaging Printing/Shipping $45,000,000 122 122
395 East Coast Wings & Grill Restaurant $44,863,631 34 34
396 Sarpino’s Pizzeria Restaurant $44,500,000 47 47
397 The Woodhouse Day Spa Personal Services $44,500,000 40 40
398 MOOYAH Burgers, Fries & Shakes Restaurant $44,499,864 71 76
399 Anago Cleaning Systems Cleaning Services $44,000,000 2,361 2,377
400 Pizza Patron Restaurant $44,000,000 95 95
401 Mad Science Personal Services $43,333,920 118 158
402 Wing Zone Restaurant $43,212,190 59 74
403 School Of Rock Personal Services $42,500,000 137 151
404 CMIT Solutions Business Services $41,260,021 146 147
405 Another Broken Egg Cafe Restaurant $41,000,000 42 42
406 California Tortilla Restaurant $40,640,423 42 43
407 Montana Mike’s Restaurant $40,362,580 26 26
408 Max Muscle Sports Nutrition Retail $40,000,000 138 138
409 Freshslice Pizza Restaurant $40,000,000 6 77
410 ZIPS Dry Cleaners Personal Services $40,000,000 40 40
411 Closet & Storage Concepts Home Services $40,000,000 39 39
412 Pita Jungle Restaurant $40,000,000 19 19
413 Archadeck Outdoor Living Home Services $39,500,000 56 57
414 Robeks Fresh Juices & Smoothies Restaurant $39,450,000 101 104
415 Zoup! Restaurant $38,100,000 66 73
416 Nestle Toll House Cafe by Chip Restaurant $38,000,000 101 147
417 Russo’s New York Pizzeria Restaurant $37,825,950 31 35
418 Erbert & Gerbert’s Restaurant $37,163,897 80 80
419 Rock & Brews Restaurant $37,000,000 7 9
420 Christmas Decor Retail $36,371,012 225 243
421 Rib City Restaurant $36,000,000 30 30
422 Color Me Mine Retail $35,848,711 112 139
423 Scooter’s Coffee Restaurant $35,777,697 109 109
424 Tailored Living Home Services $35,247,000 140 175
425 Honest-1 Auto Care Automotive $35,211,359 50 50
426 Great Steak Restaurant $35,115,943 68 84
427 Hot Head Burritos Restaurant $35,000,000 59 59
428 Big Apple Bagels Restaurant $34,939,820 85 85
429 Phenix Salon Suites Personal Services $34,890,000 120 120
430 Dream Dinners Personal Services $33,602,797 87 87
431 Monkey Joe’s Personal Services $33,577,224 53 53
432 AmeriSpec Home Services $33,000,000 190 269
433 Miami Grill Restaurant $32,310,439 33 35
434 Planet Beach Personal Services $32,000,000 157 176
435 Flip Flop Shops Retail $30,415,364 86 96
436 FirstLight HomeCare Personal Services $30,172,000 112 112
437 Tutor Doctor Personal Services $30,148,276 247 431
438 Buffalo’s Cafe Restaurant $30,113,267 17 20
439 The Great Frame Up Retail $30,000,000 95 95
440 DoubleDave’s Pizzaworks Restaurant $30,000,000 35 35
441 Seniors Helping Seniors Health/Medical $29,992,528 261 264
442 Juice It Up! Restaurant $29,948,007 81 81
443 i9 Sports Personal Services $29,364,820 139 139
444 HouseMaster Home Inspections Home Services $29,244,975 280 313
445 BuildingStars Cleaning Services $29,152,870 566 566
446 Brightway Insurance Business Services $29,000,000 118 118
447 Paul Davis Emergency Services Cleaning Services $28,328,000 105 105
448 Get in Shape for Women Personal Services $28,036,880 90 90
449 Kolache Factory Restaurant $28,011,673 46 46
450 Caring Senior Service Health/Medical $27,154,442 48 48
451 DreamMaker Bath & Kitchen Retail $27,100,000 33 33
452 Office Pride Commercial Cleaning Cleaning Services $27,000,000 127 127
453 Nature’s Table Restaurant $27,000,000 73 73
454 College Nannies and Tutors Personal Services $26,966,456 82 82
455 Green Leafs Restaurant $26,740,676 35 39
456 LearningRx Personal Services $26,378,830 88 88
457 Music Go Round Retail $26,000,000 33 33
458 Handyman Connection Home Services $25,870,791 51 75
459 Broken Yolk Cafe Restaurant $25,669,868 13 13
460 Just Between Friends Retail $25,660,690 149 150
461 TeamLogic IT Business Services $25,275,000 63 63
462 College Hunks Hauling Junk & Moving Personal Services $25,000,000 60 60
463 Zoo Health Club Personal Services $25,000,000 52 57
464 18/8 Fine Mens Salons Personal Services $25,000,000 43 43
465 Rainbow Station Personal Services $24,334,535 10 12
466 Handyman Matters Home Services $23,753,009 120 127
467 LaVida Massage Personal Services $23,372,027 55 56
468 Johnnys Italian Steakhouse Restaurant $23,113,303 9 9
469 Five Star Painting Home Services $23,075,000 62 70
470 Breadsmith Restaurant $23,000,000 33 33
471 Arooga’s Grille House & Sports Bar Restaurant $23,000,000 10 10
472 Abrakadoodle Personal Services $22,950,000 45 174
473 Mosquito Squad Home Services $22,900,000 161 161
474 ShelfGenie Home Services $22,143,171 149 161
475 Furniture Medic Home Services $22,000,000 219 264
476 Uncle Maddios Pizza Joint Restaurant $22,000,000 28 28
477 Americas Swimming Pool Company Home Services $21,349,628 176 176
478 MassageLuXe Personal Services $21,208,750 29 29
479 Chicken Salad Chick Restaurant $21,150,000 32 32
480 Caring Transitions Real Estate $21,000,000 161 161
481 Goldfish Swim School Personal Services $20,964,549 18 18
482 Dental Fix RX Health/Medical $20,000,000 103 116
483 Tint World Automotive $20,000,000 41 43
484 Figaro’s Pizza Restaurant $19,981,263 48 57
485 Bahama Bucks Restaurant $18,800,000 40 40
486 Outdoor Lighting Perspectives Home Services $18,500,000 45 48
487 Chronic Tacos Restaurant $18,500,000 24 27
488 Realty One Group Real Estate $18,453,584 63 63
489 Town Money Saver Business Services $18,231,962 42 42
490 Burger 21 Restaurant $17,901,095 14 14
491 Win Home Inspection Personal Services $17,716,208 184 184
492 Slim Chickens Restaurant $17,700,683 16 16
493 The Flying Biscuit Cafe Restaurant $17,344,928 13 13
494 Corporate Caterers Restaurant $17,124,000 18 18
495 The Glass Guru Home Services $17,039,357 81 86
496 Uni K Wax Personal Services $17,000,000 36 36
497 Mainstream Boutique Retail $16,888,770 45 45
498 Fresh Coat Home Services $16,747,805 99 100
499 Aussie Pet Mobile Personal Services $16,000,000 210 214
500 Zippy Shell Personal Services $16,000,000 42 42

ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)の実行力

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フォーチュン誌「Bezos Prime」にジェフ・ベゾスの最新情報が掲載されています。

アマゾン(AMZN)の創業者としての顔は広く知られていますが,それ以外の顔(宇宙船Blue Originの開発やWashington Post誌の個人オーナー)についてはあまり知られていません。そうした,ジェフ・ベゾスの関わる様々なビジネスについて,フォーチュン誌では大きく紙面を割いてくれています。

投資家・経営者としてのベゾスは,投資回収に関しては「超長期」スタンスです。目先の赤字は全然気にしません。普段,アマゾン社内ではビジネスの速度を上げることに執念を燃やしている男としては一見すると矛盾する性質です。(確かに,アマゾンの株主に対しても目先のEPSを追うなと,長期スタンスを求めていますね。)

なぜそんな長期スタンスが可能かというと,ベゾスは強固な信念と実行力を兼ね備えているビジョナリーだからだと思います。算盤勘定に基づいてビジネスをしているのではなく,ビジネスを成功させた後に算盤勘定すればよいという考え方ですね。

長期投資家としては,バフェットに並んで非常に参考になる人物の一人です。

ワシントン・ポストの買収

ワシントン・ポスト紙の買収はアマゾンとしてではなく,ジェフ・ベゾス個人のポケットマネーから行われました。2013年$890Mの資金を投じて個人オーナーとなったのちも積極的に資金を追加投資し,ワシントン・ポスト紙のデジタル化に成功しました。すでにニューヨークタイムズと並び,オンラインメディアとしては最大のトラフィックを稼いでいます。

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基本的にベゾスはインターネット上のユーザー体験については誰よりもうるさいことで知られています。(アマゾン・ウェブ・サービスをクレジットカード一つで誰でも使えるようにしたり,アマゾンではワンクリックで買い物できるようにしたり・・・)ワシントン・ポスト紙でも同様に契約画面の簡素化などについては直接指示を出して改善を行っています。

一方,記事そのものへの注文というのは今のところ無いようで,積極的にジャーナリズムを支援して優秀なメディアを育てたいという個人的な夢が先行しての投資に思えます。記者の数を増やし,育てている段階です。

“We need institutions that have the resources and the training and the skill, expertise, to find things,” Bezos says. “It’s pretty important who we elect as President, all those things, and we need to examine those people, try to understand them better.”

現状,収支は公開されていませんがおそらく赤字垂れ流し状態だと言われています。短期的に見れば投資失敗です。しかし,ベゾスはアマゾンでもそうですが,長期的な視点に立ってのビジネスというのを重視しているため,目先の回収は考えていないようです。

宇宙船ビジネス ブルー・オリジン

イーロン・マスクのSpaceXと並んで有名な民間宇宙船ビジネスですが,これもベゾスの個人資金で運営されています。始まったのは16年前のことで,元NASAのエンジニアなどを雇って作った会社です。現在では従業員数600人で,年間$500Mのコストがかかるとのことです。

こちらも赤字垂れ流し状態で目先の回収は不可能ですが,長期的にはローリスクで高収益が見込めるビジネスだとベゾスはとらえているようです。

“Nobody gets into the space business because they’ve done an exhaustive analysis of all the industries they might invest in and they find that the one with the least risk and the highest returns on capital is the space business,” says Bezos.

The same New Shepard booster that flew to space and then landed vertically in November 2015 has now flown and landed again.

現在はまだ無人での試験しかしていませんが,2018年にはジェフ・ベゾス自ら搭乗予定です。

“Eventually,” says Meyerson, “we want to sell these things to customers. We think we’ll start flying passengers in 2017. These will be test engineers. Then we’ll sell tickets. I imagine Jeff and I will fly in the 2018-ish time frame.”

 

 

のれんを高める広告宣伝費

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消費者独占型企業とは,高いブランド価値を有し,高付加価値を維持しつつ販売を拡大できる企業のことを指します。このブランド価値とは無形資産(のれん,GoodWill)に相当し,アニュアルレポート(10-k)の中にも記載されているれっきとした資産です。

のれんの価値

たとえば,コカコーラ(KO)の場合は,のれんの資産価値は$11,289M(コカコーラ全資産の13%)もあります。 その他の無期限フランチャイズ契約などの無形資産を合計すると$24,132(全資産の27%)にも達します。

KO-goodwill

このロゴマークが$11,289M(日本円で1.3兆円)

Coca_cola_logo-9

一見するとばかばかしいほど高い無形資産価値ですが,企業の側からすると土地のように税金がかからず,建物のように経年劣化せず,のれんの価値を高めるほど消費者へのプレゼンスが増し売上が伸びるわけですから,きわめて便利な資産です。

のれんの価値を高める

経年劣化はしない「のれん(ブランド価値)」ですが,一方で継続的に投資をしなければ価値を維持していくことはできません。ブランド価値というのは絶対的なものではなく,競合企業との競争の中で価値を有する相対的な価値だからです。競合企業が積極的に広告宣伝を行っていけば,自社の消費者に対するプレゼンスは低下していき,ひいては「のれん(ブランド価値)」の価値下落につながってしまいます。したがって,のれんの価値を高めるには,効果的なマーケティングと多額の費用を投じた広告宣伝が重要です。競合よりも効果的な宣伝を打つことができれば,「のれん」価値は向上していきます。

広告宣伝

広告宣伝は,以下の3者の間で作られ,資金の流れが生まれます。上流から順番に書きます。

3者 説明
広告をしたい企業 消費者に商品を売り込みたい企業です。
広告宣伝費用を出費する側です。
広告エージェンシー 効果的な広告戦略やコンセプトを考える役割を担っています。
日本で言えば,電通や糸井重里が相当します。
広告宣伝費用を受け取る側です。
広告媒体 要はメディアです。TVや新聞,雑誌などだったり,最近であればオンラインメディアであるグーグル(GOOG),フェイスブック(FB)などのSNSも含みます。
広告宣伝費用を受け取る側です。

収益の大半を広告料から得ているグーグルなどは,要するにP&Gやコカコーラなどの企業に支払ってもらった収益に頼っていることになるわけです。一連の金の流れを把握することで,支払い側(消費者独占型企業),受け取り側(広告媒体)の双方の業績を分析するのに役立ちます。

Adbrands.comでは,これら3者のランキングを掲載してくれているので以下の表にまとめます。

最も広告宣伝費用をかけている企業ランキング

全世界 上位25社

P&G($11,468M)が1位です。広告宣伝費用は年間1.3兆円です。これだけの広告を打つことで,世界中くまなくパンパースなどの製品群を並べることができているのです。

advertising-age-marketing-fact-pack-2015-9-638 (1)

全米 上位25社

advertising-age-marketing-fact-pack-2015-8-638 (1)

広告エージェンシーランキング

advertising-age-marketing-fact-pack-2015-27-638

広告媒体ランキング

TV

スーパーボウルやアカデミー賞などのイベント時の広告宣伝が最も効果的だとされています。

各テレビ局の広告宣伝収益ランキングでは横並びですね。

advertising-age-marketing-fact-pack-2015-22-638

インターネット媒体

ウェブページ,オンラインビデオの両方ともグーグル(GOOGL)がトップです。つづいて,ヤフー(YHOO)やフェイスブック(FB)などが顔を出しています。

advertising-age-marketing-fact-pack-2015-20-638

インターネット媒体の比率

広告宣伝のデジタル化は年々進んでおり,約30%がインターネット媒体になっています。

advertising-age-marketing-fact-pack-2015-16-638

メディア媒体ランキング

依然としてテレビが首位ですが,ほとんど広告宣伝収益が伸びていません。2位のインターネット媒体に10倍以上の差をつけていますが,それだけ同時に多数の消費者に宣伝を打つことのできる媒体が限られていると言うことを表しているのだと思います。

逆に言えば,全世界で同時にキャンペーンを打つ技術がインターネット上で開発されれば話は変わってきます。(たとえば,地震速報のような形でゲリラ的に世界中のパソコン・スマートフォンに30秒CMを出す技術などが生まれれば,の話ですが。)

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行動心理学(3) 桜井章一『恐れない技術』

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永久投資家として長年投資の世界に足を突っ込んできましたが,最近になってつくづく思うのは投資は自分との闘いだと言うことです。場に立つというのは中毒性のある楽しみでもあるのですが,一方で不安や恐怖とも背中合わせです。

そんな中,雀鬼桜井章一さんの本に出会いました。麻雀の世界と投資の世界では異なる部分も多いのですが,こと投資の「勝負」に目を向けた場合,共通する部分も多いです。

今回は桜井章一さんの著作『恐れない技術』を紹介します。

恐れを克服する

(引用はじめ)ところで,多くに人間の精神が「不安」や「恐怖」に支配される一番の「理由」は何なのだろう?

はっきり言ってしまうと,それはほとんどの人間が「明日」のことを気にしすぎているからだろう。明日というのは,必ずしも翌日のことでなくてもいい。今から先のそう遠くない未来,という意味でもある。(引用終わり)

投資の世界で言うと,チャートを見て株価を予想するのが仕事であり「明日のことを気にしすぎる」ことを宿命づけられたゲームです。ただ,勝ちたいという思いからいろんな分析手法を利用したり,投資情報を集めたとしても結局,どの株がどれぐらい上がるという確証は得られません。それが不安の種になるということですね。

(引用はじめ)私に言わせれば「動じる」「恐れる」の反対語は,「腹をくくる」なのである。とにかくどんな問題であっても,まず腹をくくってしまう。覚悟を決めると言うことだ。怯えの世界に引きずり込まれないように,心を整えるといった方がわかるかもしれない。(引用終わり)

投資ブログを見ていると今年の年初には「ワー」「ギャー」という阿鼻叫喚な叫びを書き込んでいる人が大勢いました。私もそういう書き込みを見て大いに影響を受けてしまったのですが,2ヶ月経ってみると相場は平穏そのものです。

「ワー」「ギャー」という状態は,車で人を撥ねてしまった後のパニック状態のようなものです。やばいことになった,終わりだと言ったネガティブな発想が頭をよぎりますが,人を撥ねて逃げたらひき逃げ犯です。腹をくくって対処をするというのが投資家としての正解です。

アクション

買った株が予想に反して下がった場合が問題です。もちろん,原因が訴訟(フィットビット(FIT)やジョンソン・アンド・ジョンソン(JNJ))だったり,減配(キンダー・モルガン(KMI)やコノコ・フィリップス(COP))だったりしたらどうしようもないので売りますが。

今までは買値より8%下がったら売却する運用ルールを徹底してきました。人によっては損切りが苦手な人もいますが,私の場合はオニールの本のおかげで「含み損と実現損は同じ」という考え方を持っていますので,損切りは機械的に冷静にできます。でも,逆に買いが慎重で買い場を逃すのが典型的な負けパターンです。含み損や含み益に対する感じ方は人それぞれなので,「含み損と実現損は同じ」は私の価値観として残しておこうと思います。

しかし,今のゆるゆるの投資環境でそんなに厳しい損切りを徹底している人はほとんどいません。どちらかというと,下がっても様子見かさらには強気に反発待ちのナンピン買いをしている人の方が多いです。暴落はバーゲンセールという見方に個人的には共感はしませんが,共感はせずとも行動は起こせます。これまでとは正反対に下がったら買い増しで強気姿勢で取り組むつもりです。

がっかりを克服する

(引用はじめ)では実際に,約束を破られたり,信頼を裏切られたりしたときに,動揺しないために一番いい方法は,どうすることなのだろうか?

それは最初から他人に過度の期待をしないこと,もしくは願望を持たないことである。なまじ,相手に期待をするから,裏切られたときに,人は動揺をするのだ。

「夢」を持たない,期待をしない。そして「現実」をしっかり見つめる。それが,動揺しない,ひいては何も恐れないための秘訣でもある。自分がこれから行く先に,何かいいことがあるかもしれないなどと期待をするよりは,期待などことごとく裏切られると思って奥ぐらいの方がいいだろう。(引用終わり)

桜井章一さんの著作を読んでいると,これに関連して「あきらめる」ことの重要性も繰り返し説かれています。期待が大きければあきらめきれない,あきらめきれなければ前に進めないので,まずはあきらめなさい,ということです。

私はジェレミー・シーゲル博士の「株式投資 Stocks for the Long Run」を愛読し,またバリュー投資家のウォーレン・バフェットやグロース株投資家のウィリアム・オニールを尊敬しています。こうした投資家の投資法を学んだことで,最低でも7%のリターン(長期平均),目標としては年率20%(バフェットの平均),さらには短期間で10倍になるテンバガー探しを「期待」して投資してきました。

これは自分の能力に対する期待ですが,今まで裏切られて動揺することの方が多いです。そもそも自分の能力を過信しない,あるいは著名な投資家の成績を重要視しないということも心の平静を保つためには必要です。

アクション

投資の世界では「がっかり感」が尾を引くと,やけっぱちになって滅茶苦茶なトレードをしがちです。それは極端に自分に期待をしてしまって,自ら高いストレス状態に身を置いているからかもしれないと感じるようになりました。(あとはアーリー・リタイヤという究極の目標を持っているというのもあります。)

自分への期待格付けを引き下げ,年間の目標リウォード・レシオを引き下げようと思います。(リウォード:30%,リスク:-8% =>リウォード:15%,リスク:-12%)今まで安全重視で銘柄選別をしてきたため,逆に買い場を逃すという状態に陥っていました。株価上昇の目標額を+30%から+15%に下げることで少し肩の力を抜いて投資できるようになることを期待しています。また,損切りラインも-8%から-12%に引き下げたので,下げ相場に対して握力が増すことでしょう。

私は個人投資家ですが,やってることは企業の次期ガイダンス売上高,EPSの引き下げに他なりません。ステークホルダーは自分自身のみとはいえ,罪の意識が芽生えますね・・・。ただ,期待と実績のギャップが開くのはよくないので今はこらえます。将来的にガイダンスを引き上げていきたいですね。

また,アーリー・リタイヤ願望もしばらく封印することにしました。というのも,アーリー・リタイヤを標榜している投資家ほど「時間的に焦っている」ことに,ブログ村を見ていていて気づいたからです。非アーリー・リタイヤ派の方が焦りがない分,精神的には優位です。

いい勝負をする

(引用はじめ)勝負で大事なことは,「どうやったら勝つか」ではなく,「いかにいい勝負ができるか」だ。それを第一に考えると,自分だけでなく相手のこともよく見えてくる。

そして,いい相手と「いい勝負」をすれば,勝っても負けても相手に敬意を払える。

勝つことだけを目的にすると,どうしても精神が卑しくなる。これは勝負の世界だけでなく,人生においても同じことだろう。「勝ちたい」と思えば,汚いことも,ずるいことも平気でやるようになってしまう。

勝つよりも負けないことを目指せばいい。そう考えられれば,君は人生にまるで「恐れる」ことなどなくなるはずだ。(引用終わり)

相場とは素人とプロとコンピューターが一緒になって打つ100万人麻雀のようなものです。そして,勝負である以上勝ち負けはつきものです。ただ,勝つことにとらわれると汚くもなり,心も汚れ,恐怖も芽生えます。

いい勝負をすることの価値は頭ではわかっていても,いったん張ってしまうとつい算盤が自動的に頭の中で働き始めてしまうと言うのが投資家の常です。この算盤脳は相場を「いい勝負」として楽しむ余裕を奪ってしまうものなので慎まないといけません。

アクション

投資の楽しみ方の一つとして,リターンを競うというのがあります。ですが,リターンを投資のモチベーションにしてしまうと,どうしても他人との比較や勝ち負けといった雑念が紛れ込みます。それよりは,大局的に相場を楽しめるようになっていきたいと感じました

今までも具体的な投資銘柄等は公開してこなかったですが,今後も公開は控えておこうと思います。どちらかと言えば,このブログでは株価の上げ下げによる一喜一憂を記録するのではなく,さまざまな投資のアイデアであったり,企業分析のアイデアであったりを共有できればと考えています勝っても負けても

原油価格下落の犯人

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岩瀬昇さんのサイトで紹介されていたFT.com「OPECの落日」の記事を読みました。その感想を書こうと思います。

今後の原油価格予測

結論だけ先に書きます。現時点での私の予想です。

  • OPECの減産見込みは低い。よくて凍結。
  • イランは増産するだろう。
  • シェールオイル企業も減産するつもりはない。
  • 原油価格を決められるプレーヤー(独占的カルテルや発言力のあるリーダー)は今の世の中に存在しない。
  • したがって,需給はまだまだだぶついて,原油価格の急騰は見込めそうにない。
  • それでも,マーケットの神の手により,今年後半には底打ちするだろう。下値のめどは$25/バレル
  • というのも,実は「下落を望む」プレーヤーなどいないから。単なる無秩序がことの発端である。あえて言えば,原油先物トレーダーが主犯である。
  • サウジアラビア陰謀論にあるような「サウジが増産して積極的にシェールオイル企業の息の根を止める」意図はない。むしろ,シェールオイル企業間の競争過熱と産油国間の政治的対立が原油価格下落の発端である。
  • シェールオイル企業にファイナンスする投資家は多いので,どれだけ原油価格が下落しても,実はシェールオイル企業は倒産しない(正確には,倒産してもすぐ企業再生チームによりファイナンス・再生されてゾンビのように甦る)
  • シェールオイル企業の倒産が米国経済に与える影響をそれほど心配しなくてよい。あえて言うなら,米国失業率の上昇ぐらいである。
  • それでも,原油価格下落が投資マインド(PERマルチプル)に与える影響は絶大なので,原油価格相場に乗りながらトレードすべき。(GDPへの影響が小さいのはわかっていても,ファンダメンタルだけでトレードしては痛手を被る可能性が高い。)

カップリング論

以前にも何回か検討したとおり,私は2016年に入って米国株は企業業績ではなく原油価格にカップリングする時代になったと考えています。以下のチャートのうち,右端4ヶ月だけ見てもらうと突如ダウ・ジョーンズ工業平均と原油価格のチャートが相似形になっているのにお気づきになると思います。このトレンドは当面続くと考えています。というのも,米国は資源国になりつつあるからです。以前は,米国はエネルギー純輸入国でしたので,「原油安=消費アップ=好業績=米国株高」が期待できましたが,今は「原油安=シェールオイル産業大丈夫か?=心配だ=リスクオフ=PER低下」という投資マインドが支配的になりました。したがって,原油先物のトレンドを見て米国株に投資するというアイデアでいくのが今年はよいと思います。

$INDU20160411 $WTIC20160411

なぜPER低下を気にするか

私はバフェット流企業財務諸表分析を投資のベースとしていますが,実はそれだけではほとんど株価予想が当たりません。当たらない理由は下図の通り,「企業業績と株式リターンには相関が弱い」からです。要するにブル・マーケットでは企業利益を遙かに上回るリターンが出るし,ベア・マーケットでは企業業績が伸びてもマイナスになることがあるのです。要するに,株価は完全なテクニカルな相場であり,またPER(企業利益に対して何倍まで金を払えるか?)の変動の幅の方が遙かに支配的だからです。

原油価格が下がるとリスクオフ=PER低下が私たち個人投資家にとってどれほど恐ろしいことかおわかりいただけると思います。(損切りラインに到達してしまうリスクが増える)

どれぐらいが「原油価格の安全ゾーン」かというと,米国シェールオイル企業すべてが儲かる$70/バレルを超えれば,原油価格と米国株のカップリングが緩くなってくれると期待しています

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FT記事「OPECの落日」

要はイランの動向が読めないのでOPEC合意は骨抜きになるだろうということですね。

  • OPECの参加国間は取り返しがつかないほど分裂しており,原油価格の下落を反転させることができないでいる。OPECが原油価格決定力を持っていた時代は終わった。OPECは明らかに分裂した組織だ。
  • 1960年に設立されたOPECは原油供給量を引き締めたり増やしたりすることで原油価格をコントロールしてきた。
  • 4月末にはカタール・ロシア・サウジアラビア・ベネズエラがドーハに集まり,原油産出量上限を今年1月のレベルに留める方針で交渉するが,交渉がまとまるという保証はない。
  • サウジアラビア皇太子は「イランが合意する場合を除いて,凍結交渉はまとまらない」と語った。しかし,イランは核交渉により輸出を増やしたいと思っているので,合意する可能性は低いだろう。
  • ヤーギン氏は「イランがどれだけ輸出できるかを明らかにしない限り,原油産出量凍結は不可能だろう」と予測している。
  • ヤーギン氏自身は「すでに原油保管庫の多くは満タンだが,まだいくらかは貯蔵できる余地がある。今期が原油価格の底だろう。原油価格は今年後半か来年早々に反転するだろう」と見ている。

原油価格下落の責任

ちまたでは,サウジ・アラビアが米シェールオイル企業を潰すために原油を大量増産したかのように考えられていますが,実はそんなに増産していません。どう見ても原油の需給を破壊しているのは米国側です。

サウジ:1992年以降はほぼ横ばい。増産は年率1%程度にとどまる。

saudi_oil

米国:2008年頃以降約倍増。今後も長期的には増える見通し。

US_oil_production

サウジ犯人論

ではなぜサウジアラビアが原油価格下落チキンレースの主犯だと思われたかというと,どうも複雑な要因が絡んでいるように感じられます。

要するに以下の2点。

  1. 米国シェールオイル企業は各社競って増産した。米国では「原油輸出は違法」なので国内で勝手に競争する。米国企業は世界の需給など気にしていないが,結果的に世界の需給バランスを破壊した。
  2. ロシアやイラン(シーア派)は,サウジアラビア(スンニ派)とは地政学的には敵国である。シリア問題など含めて対立しており,OPEC・非OPECに関係なく石油産出量に関して議論できる政治的余裕がない

こう思った理由はサウジアラビア石油省ナイミ氏の発言です。ナイミ氏は元々サウジ・アラムコの経営者であり1995年に石油相に就任したドンのような人物です。ナイミ氏の言っている発言だけをとらえるならば,戦略的にシェールオイル企業潰しをできる能力があるのかどうかは定かではなく,どちらかと言えばまとまりのないマーケットへの憤りが感じられました。みんなが好き勝手にやるから,投げやりになったという感じでしょうか。

ナイミ氏発言

  • サウジアラビアはシェア拡大の意図はない。
  • だが,原油産出量に関する合意に達することができないので,マーケットの需給に任せるつもりだ。(昔ながらの「自由放任主義の神の手」理論ですね。)
  • USのフラッキング企業がオーバーサプライしたのが原因だ。
  • オイルマーケットでの競争は厳しいがサウジアラビアはベストを尽くすつもりだ。

CNBC

The rout accelerated after OPEC announced in November 2014 it would not cut production to prop up prices. Instead, members have continued to pump unabated in a bid to defend market share and pressure higher-cost producers.

Naimi disputed the idea that Saudi Arabia was trying to capture more market share. He said the Saudis were simply meeting the demand of their customers.

“The oil market is much bigger than OPEC. We tried hard to bring everyone together — OPEC and non-OPEC — to seek consensus. There was no appetite for sharing the burden, so we left it to the market as the most efficient way to rebalance supply and demand,” Naimi said.

“We have not declared war on shale or on production from any given country or company, contrary to all the rumors you hear and see,” he said, referring to the U.S. fracking industry. A boom in U.S. shale oil contributed to a market that is estimated to be oversupplied by about 1 million to 2 million barrels per day of oil.

Analysts have also speculated that the Saudis want to punish Russia, which relies on taxes from oil revenues to fund its government. Russia has supported Saudi Arabia’s regional rivals, including Iran and Syrian President Bashar Assad.

“We are doing what every other independent representative in this room is doing. We are responding to geology and market conditions and seeking the best possible outcome in a highly competitive environment,” Naimi said.

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