ノボ・ノルディスクはデンマークに拠点を置く製薬企業です。連続増配年数は18年(推定)の配当コンテンダー(10年〜24年連続増配)です。
特に糖尿病分野では多くのメガファーマ競合がひしめく中で高いシェアを誇っています。1923年の創業当時からインシュリンの製造を行っており,メドトロニック(MDT)が心臓ペースメーカーの老舗で現在もリーディングカンパニーであるのと似たような構造です。
決算をチェックする上で要注意なのがデンマーク・クローネ(DKK)単位で表記されていること。現在は,1DKK=15.25円,1DKK=0.15USDですのでドル換算に読み替えてください。
企業ホームページ
セクター
ヘルスケア
企業概要
ノボ・ノルディスク(NVO)は1923年創業の製薬メーカーです。
重点分野と位置づけている糖尿病・肥満・血友病・成長ホルモン疾患の4分野においてはリーディング・カンパニーの地位を築き上げています。多角的経営を指向するというよりは,これらの強い分野にリソースを集中する経営方針です。
この経営方針は”NOVO NORDISK WAY(ノボ・ノルディスク・ウェイ)”と称されています。呼称まで付けて社員に浸透させようとしているのがすばらしいですね。
経営陣
CEO:Lars Rebien Sørensen
規模
従業員数:41,600名
拠点:世界75カ国
地域別売上:デンマーク本国が0.3%,デンマーク国外99.7%というグローバル企業です。
近況
2015年は各国現地通貨ベースで+8%の売上増でした。売上増のうち62%は米国が占めています。大半は,1種糖尿病治療薬の新型インシュリンと2種糖尿病治療薬ビクトーザ(Victoza)の売上増加によるものです。現在,ノボ・ノルディスクのインシュリン売上のうち新型インシュリンが82%を占めており,1日1回注射タイプなどの簡便なものが主流になっていることが伺えます。また,ビクトーザはGLP-1と呼ばれる糖尿病では67%のシェアを占めています。
直近の2016年Q2決算では米国での売上成長率が伸び悩み始めていることが明らかとなっています。ノボ・ノルディスク側の見解としては競合の激化が主要因だろうとのこと。
No.1戦略
製薬業界では各製品カテゴリーでNo.1になることを目指す戦略を各社が採っていますが,ノボ・ノルディスクの場合は以下の3分野(糖尿病,血友病,成長ホルモン)において高いマーケットシェアを確保しています。
糖尿病セグメント
なんと言っても糖尿病でのマーケットシェアが最重要指標です。全世界で46%のシェアをキープしているのは立派です。
ノボ・ノルディスク業績の柱である糖尿病ケアでは,2020年までに4,000万人の患者に製品を届けることを目標と定めています。2015年時点では2,680万人がノボ・ノルディスク製品を使用しており今後5年で+40%の上積みを目指していることになります。
地域
地域別では北米が50%を占めており,次いで欧州,中国,日本,その他海外と続きます。売上成長に占める北米の割合が極めて高く,ここ5年で約2倍にまで成長しています。その他地域では中国での伸びが顕著ですが,やはり北米が最重要市場であることには変わりありません。
製品別売上構成
現在のノボ・ノルディスクの柱となる製品は新型インシュリン(Modern Insulins)とビクトーザ(Victoza)です。これらは上の図でも売上が急成長していることが読み取れます。また血友病・成長ホルモン関連の売上も成長してはいますが,成長率は高くありません。市場規模自体,糖尿病や肥満と比べると遙かに小さく業績の柱となることはないと考えられます。やはり糖尿病治療薬の会社だとみなして良いでしょう。
コストカット
売上成長が続いていることもありますが,販管費やR&D費用の対売上比率が年々改善されており,営業利益・純利益マージンの向上に貢献しています。
製品パイプライン
以下のパイプラインを見ても過半数が糖尿病関連であり,次いで肥満(糖尿病と関連性が深い),血友病,成長ホルモンと続きます。
市場
ノボ・ノルディスクのターゲットとする4分野のターゲット患者数は以下の通り。慢性疾患であり完治しづらい病気が多いためにとんでもない患者数となっています。
- 糖尿病:4億人(うち2680万人がノボ・ノルディスク製品を使用)
- 肥満:6億人
- 血友病:40万人
- 成長ホルモン疾患:子供1000人中3人(0.3%)
ただし,これらの数字は潜在的な患者数の推定値であり,糖尿病患者の場合実際には「診断を受けているのは4億人の50%=2億人」さらに,治療を受けているのは「4億人の25%=1億人」という風に実際にノボ・ノルディスクの製品を使うことになる率は高くありません。今後の診断技術の発達や定期健康診断などの診断制度の世界的な普及が待たれます。
競合状況
下図は糖尿病の世界市場シェアの推移ですが,武田やGSKが大きくシェアを落とす中,ノボ・ノルディスク(NVO)とサノフィ,メルク(MRK)はシェアを伸ばしています。現在はイーライ・リリー(LLY)が徐々に巻き返しつつある状況で,競争は厳しくなりつつあるようです。
最近のマーケット状況
25年チャート
5年チャート
2015年以降,株価は伸び悩んでいます。主な原因は徐々にマーケットシェアの伸びが鈍化・低下しつつあることでしょう。売上自体は成長を続けていますが,従来ほどの成長継続は困難になっていくと考えられます。
日足チャート
10年ファンダメンタル分析
10年ファンダメンタル レーダーチャート
ファイザー(PFE)やメルク(MRK)などと比べるとブランド力に欠ける点を除けば,収益性・成長性・財務健全性・株主還元どれをとってもすばらしい企業です。
10年ファンダメンタル 得点表
morningstarの過去のデータが一部変になっており,配当利回りの数字がおかしいですが,平均して配当利回り3%,自社株買い利回り2%程度で推移しています。連続増配も続けており配当成長は年率20%程度です。
5年平均 | 5年スコア | 10年平均 | 10年スコア | |
配当株総合評価 | 309 | 323 | ||
グロース株総合評価 | 非該当 | 非該当 | ||
グロスマージン(粗利率) | 83.1% | 32 | 80.9% | 32 |
営業キャッシュフローマージン | 32.2% | 21 | 30.6% | 21 |
株主資本利益率(ROE)平均値(Net Income/Equity) | 60.5% | 20 | 42.8% | 20 |
有機的成長率(ROE x 内部留保率) | 35.1% | 12 | 30.7% | 12 |
無機的成長率(BPS成長率) | -0.6% | 0 | 4.4% | 0 |
収益力評価 | 85 | 85 | ||
営業キャッシュフロー増加率 | 12.4% | 30 | 17.3% | 40 |
フリーキャッシュフロー増加率 | 12.1% | 32 | 21.8% | 32 |
EPS増加率 | 17.6% | 28 | 21.1% | 28 |
成長力評価 | 90 | 100 | ||
自己資本比率平均値 | 57.9% | 40 | 61.2% | 40 |
流動比率(流動資産/流動負債) | 173.6% | 30 | 196.2% | 30 |
クレジット格付け | 0 | 0 | 0 | 0 |
財務健全性評価 | 70 | 70 | ||
平均配当利回り | 10.3% | 28 | 9.9% | 28 |
自社株買い利回り | 2.0% | 8 | 2.2% | 12 |
配当金増加率 | 21.3% | 28 | 19.5% | 28 |
配当性向(増配余地) | 39.3% | 0 | 36.0% | 0 |
株主還元評価 | 64 | 68 | ||
ブランド力 | 0 | 0 | 0 | 0 |
エコノミック・モート | None | 0 | None | 0 |
定性的評価 | 0 | 0 | ||
機関投資家比率 | NaN | 8 | NaN | 8 |
機関投資家の売買動向 | 0 | 0 | ||
インサイダーの売買動向 | 0 | 0 | ||
現在の株価 | 180.9% | 0 | 180.9% | 0 |
現在のPER(Forward) | 19.37 | 8 | 19.37 | 8 |
現在の配当利回り | 3.0% | 16 | 3.0% | 16 |
(配当+自社株買い)利回り | 12.9% | 16 | 11.8% | 16 |
疑似債権成長率 | 35.8% | 4 | 35.8% | 4 |
直近株価評価 | 52 | 52 |
10年分析グラフ
北米を中心とした売上成長が続いており,10年で売上高が3倍に伸びています。ギリアド・サイエンシズ(GILD)のような夢のような治療薬を売る一発屋ではなく,慢性疾患治療薬という地味ながら永続可能なカテゴリーに事業のコアを築いている点が評価できます。
また財務管理も完璧でグロスマージン・CFマージンも極めて高く,不況の影響も受けていません。慢性疾患患者が治療を中断することはないので,不況に強いのは当たり前ですが。
成長し続けるフリーCFは自社株買いと配当によって還元しており,株主還元にも積極的です。
※バリュエーションに関してはmorningstarのせいか,データがおかしくなっています。
優良銘柄の条件
優良銘柄の条件 | 結果 | 判定 | 備考 |
条件3:他社と差別化できる優れた新製品を持つ | 特に糖尿病分野に強く開発リソースを集中。 | ○ | |
条件5:主力製品の市場が長期的に拡大し続ける余地がある | 糖尿病患者の人口自体増え続ける&診断・治療を受ける人口も増えることが期待できる。 | ○ | |
条件10:売上,営業キャッシュフロー,フリーキャッシュフロー,EPSのバランスがよい | 見事なバランス。 | ○ |